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電子背景のセットを作ったという方のスタッフが口を挟んできた。
「こいつ、高飛車なしゃべり方だが、異様な迫力と勇気がある。
普通、花を真っ二つになんか、できやしない。
見目も文句付けようないし、やらせてみよう」
「何言ってんだ。
勇気って……。
ただおかしいやつなだけじゃないのか?!」
夜陣は聞いているのか、いないのか、堂々と言った。
「ふむ、感謝する。
ただ、歌うのはオレじゃない」
「は?!」
「オレは夜陣……。
コンポーザーだ。
お前らの遺伝子、揺らがせてやるよ」
「はあぁ?!」
「……というわけだ。チャンスだぞ」
勝手に話をつけてきてしまった夜陣にせいかとレーレは猛抗議した。
「チャンスだぞ、じゃないでしょ!
全く人をムカつかせる天才なのにどうやって交渉したのよ。
DTM部って言ってはみたって、あくまで始めたばかりのしろうとの高校生なのよ、私たち」
「人前で歌ったのなんて、この前の新歓が初だせ?
いくら、学校のやつがいないからって、プロの歌手を楽しみにしてるアウェーな場所で代わりとして歌えるはずがないだろう?!」
「できる」
夜陣は断言すると、龍華へ向き直った。
龍華も真っ直ぐ夜陣を見返した。
龍華は尋ねた。
「夜陣……、ステージの持ち時間は何分だ?」
「十五分だ」
「二曲分プラスアルファか。短いな」
「いや、評価をもらうのには充分だ。
お前とオレ、どちらの初夏コーデが優れているのかの評価をな」
「なるほど。つまり、一曲ずつだな」
せいかとレーレはただ歌わされることにさえ躊躇していたのに、何と夜陣と龍華はステージを利用して曲だけでなく、コーディネートにも白黒つけようとしているらしい。
せいかはさらに焦った。
「ちょっとぉ、ただ歌うならまだしも、私レーレちゃんみたいにほっそりしてないし、コーデ対決のモデルには向いてないよぉ」
龍華がフォローする。
「大丈夫だ、お前は、そうだな……
肌も白いし、その服装、似合ってるから」
「それ、店員さんの言ってたことまんまじゃん!」
夜陣が言った。
「ただ順番に歌うだけでなく、電子スクリーンの映像とマッチしたストーリー仕立てにするぞ。
お前ら歌姫はオレのストーリーを彩るイチ要素に過ぎん。
ごちゃごちゃ主張するな」
せいかはむくれた。
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作者名:ルスブ | 作者ホームページ:http://twitter.com/rusbsss
作成日時:2022年9月9日 10時