ひとりにしないで

きっと ＊ ページ25

公演前に、写真を撮って送ろうとしたところでハッとした

そっか…

あの子は知らないんだった…

俺が誰で、どんな仕事をしてるのか…

…俺が芸能人だと知ったら、彼女は今と変わってしまうだろうか…




「ドンへ、もう行くぞ」


「ヒョクチェ、待って、えっと…」


「早くしろよ」


「…よし、おっけー…行こう」


「…」


「ん？」


「…いや…ほら、また怒られるぞ」


「ヒョクが宥めてってば〜；」




慌てて打ち込んだメッセージ




『これから仕事！Aも今日もお疲れ様！』




仕事が終わって、最初に見るメッセージが俺のだったらいいな




.




.




.





「…」


「…」


「…ドンへヒョン」


「…んー？」


「いつまで俺の部屋にいるんですか？」


「だってなんか知らないけど俺の部屋でトゥギヒョンとヒョクチェが飲み始めたんだよ」


「一緒に飲めばいいじゃないですか」


「…やることあるし」


「…さっきからスマホ眺めてるだけじゃないですか」


「……いや、だから……うるさいなぁ…」


「ったく…俺がシャワーから出る前に部屋戻ってくださいね」



大きなため息をついた弟も気にしない

気になるのはメッセージの返信

仕事が終わったようで、あの子から返事が返ってくる

ゆったりしたテンポで、ひとつ、ふたつ



"明日はお店はおやすみなの"


"どこか出かけるの？"


"うん、気になるカフェがあるから行こうかなって"


"いいね。寒いから温かくしてね"


"ありがとう、マルもね"



馴染みのなかった呼び名が

今は心地よい



"こっちも凄く寒いよ"


"わ、素敵な夜景ね…お仕事は順調？"


"…どうだろう、今日はあんまり格好良くできなかったけど"


"そうなの？"


"…でも明日はうまくできるといいな！"



いつの間にか後ろ向きなメッセージを送ってしまっていて

慌てて繕う

すると、続いていたメッセージが止まる

なんの仕事をしてるのかも分からないのに、

こんなこと言われても困るよね…

画面を閉じようとして、再び鳴った通知音







"マルみたいに、そう思えることが格好いいことだよ"








きっと

あの子は変らないでいてくれる気がする

俺が誰で、どんな仕事をしていても…


キラキラした可愛いあの店へ

冷えた心でやってきた俺に

温かいシチューをよそってくれるんだ




"ありがとう"




なんて、

半分は俺の希望…かな









「…」


「…ったく、このヒョン…寝るなら自分の部屋で寝てよ……(笑)」

今夜は二人で→←子犬 ＊

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