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三十五話 ページ5

「いっっっっったあぁぁッッ……………。」


あまりの痛さに額を覆ってその場にしゃがむと、追撃のように頭をどつかれる。
察しはしていたが、旧友に向かってこうも酷い当たりは嫌われると思う。


「愚か者が!お前、千の年月も姿を消して、よくもまぁさも当然のように妾の前に姿を表せたものだな!その弛み切った根性、ここで叩き直してくれようか!!」

「痛い!割と痛い!!」


必死の抗弁を述べようにも、ツッツキ回されてちゃあ痛くて言葉も続かない。それを知ってかしらずか、留雲は啄みが済んだら今度は嘴で頬を引っ張る始末である。痛いって言ってるのに。
空とパイモンはもはや蚊帳の外。二人でぎゃあぎゃあと騒ぐ様はなんとも滑稽と言えようさ。


「君と喧嘩しに来たわけじゃないんだよ!!今璃月で大変なことが起こってて、それを伝えにきたの!!」

流石に、ずっとツンツンされていては溜まったものではない。今尚私の頬をつねる嘴を押しのけて、声を荒げて私はなんとか留雲に話を聞く姿勢になってもらおうとするが、一度熱くなってしまうとすぐに熱が冷めないのは彼女の良き悪きところで。

「黙らぬか!お前が行方を眩まし、この幾千年の間、どれほど皆が再会を願い、お前の安否を心配し、さらには弔いまで行ったか!お前の葬式を行ったあの日、甘雨がどれだけ涙したか!!」

削月の時にも聞かされた話である。勝手に殺すなという話でもあるが。
こうなってしまっては彼女の気が済むまで私のことを突かせるしかないのだろう。彼女の怒りに身を任せ、私はただその啄みの雨が止まるまで待った。
…次第に私を突く嘴は次第に勢いを弱め、そのうち、止まってしまった。



「……………何故に、我らを、帝君の下を去った。」

次に頭上から降ってきた言葉はそれだ。それだけだった。





「…別に、自分の為だよ。誰かのせいじゃない。」

「そうではない!」

鋭い声が耳を貫く。いつになく真剣で、必死にも思える留雲の声が予想外で、私はようやく、彼女の目を見た。
映る感情は私の想像していたものとは異なり、とても哀愁に満ちた物ばかりで。





「何故…何故、お前は誰にも何も告げず、消えてしまったのだ。」

──────────あぁ。



彼女は私を、ひどく心配していたのだと、やっと理解した。

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ノア(プロフ) - まっでまじだ!! (2022年11月13日 9時) (レス) @page33 id: 7cc6cd9634 (このIDを非表示/違反報告)
ぐへへへへ - あばばば好きすぎます!!お体お気をつけてください!続き楽しみにしてます!! (2022年9月14日 1時) (レス) @page32 id: 55d4558f37 (このIDを非表示/違反報告)
gtuysut5843…(プロフ) - 更新楽しみにしてます!お忙しいでしょうが頑張ってください! (2022年9月2日 0時) (レス) @page32 id: 5bb1efd8a4 (このIDを非表示/違反報告)
rurinigana(プロフ) - すっごい好みなものを見つけてしまった…!夢主ちゃんかっこよすぎる!!これからも更新頑張ってください!応援してます! (2022年6月22日 11時) (レス) @page32 id: 29637ba3af (このIDを非表示/違反報告)
ふわな - 本当に面白いです!これからも頑張ってください!応援してます! (2022年6月15日 8時) (レス) @page30 id: 71a4ce2144 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:とりまろ。 x他1人 | 作成日時:2021年6月10日 13時

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