分かりません ページ22
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私、そして春市君は誰一人いない教室に向かい合って座っていた。
「ここ、分かる?」
「漢文は得意!!」
漢文だけはスラスラと解ける私に春市君は「何で漢文だけ……」と呟く。どうして漢文だけかって?受験の時に漢文を教えていたのが介さんだからだよ。
何回か命の危険を感じたからね。死にもの狂いで頑張ったんだ!
「じゃあ数学やろうか」
春市君が数学の教科書を取り出したのを見て私はガタッと立ち上がる。足は教室のドアの方向に向いている。だが、決して足は動かなかった。
何故なら、春市君が物凄い強い力で私の腕を掴んでいたからである。……以外に力強いな、春市君。じゃなくて!!
「何、逃げようとしてるの」
ニコリと笑う春市君は恐怖対象でしかなかった。恐い、恐いよ。何か後ろに介さんも見えるし……本当に血の繋がった兄弟なんだなぁ、この二人。
「ここはxを二乗するんだよ。ここを、こうかけて……」
「あっ、だからこの答えは……」
「そうそう。結城さんは飲み込み早いからちゃんと勉強すれば出来るのに…。いつも寝てるからだよ?」
「授業は子守唄に聞こえる」
真顔で私がそう言うと春市君は「よくそれでこの学校に受かったね」と苦笑いしながら言った。
「介さんと兄貴スパルタ指導のおかげです」
あの二人は本当にスパルタだった。今思い出しても本当に……やばくて凄かった…。何回倒れかけたことか。何回インコに心配されたことか……。
思い出して「はははっ」と乾いた笑いをしていれば春市君に「頑張ったね」と同情したような目で見られた。悲しいです。
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