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心臓が、速度を上げて刻んでいく。
ああ、もう。期待してしまう。
そうであってほしいと、心底願う。
震え出した手に気づかれたくなくて、一歩二歩と先を急いで距離を取る。
平然を装うため、振り返り背後で手を組んでみせ、話しを逸らした。
「ねえ、次はさ。お寿司が食べたいな」
脈絡のない話題変換に、彼は少しだけ目を見張ったけれど、すぐにフハハと吹き出して「もう次の話？」と顔を背けた。
伏せられた瞼が不意に開き、視線が重なる。
じいっと見つめ合って数秒後、真剣な面持ちだった彼の口元がふわりと緩み、もう何度目かの笑顔となった。
「ええよ。食べ行こう」
コロコロと変化する表情に、心はいちいち翻弄される。
「お酒もいーっぱい飲もうね」
「Aちゃんは飲み過ぎやて」
彼といると楽しくて、話してるだけで嬉しくなって。
ついついお酒も進んでしまう。
たとえ本当のことだとしても認めたくないのは、乙女心ということにして欲しい。
「そんなことないよ」
彼の言葉に抵抗するように、後ろで組んでいた手を勢いをつけて手前へと振り出した刹那、足元がバランスを崩してぐらりと体を傾けていく。
まずい、転んでしまう。
危機感が頭の中を占め、「あ」と唇が綺麗な丸を描いた、その時。
細い腕が咄嗟に飛び出してきて、目の前を通り過ぎていった。
それは一瞬の出来事で、私は彼の腕の中に抱えられていて。
彼のおかげで転倒することなく、最悪の事態を免れることが出来たようだ。
見下ろされる漆黒の瞳。
彼に触れたところから伝わる体温。
「ほら、そんなことあったやろ？」
にやりと、意地悪そうに片側の口角だけを上げた彼が真っ直ぐに視線を送ってくる。
その目に射抜かれた私は、ただぼうっとその目を見つめ返して。
心音が心地良くリズムを刻むのを、どこか他人事のように聞いていた。
ゆっくりと近づいてくる顔。
それはまるで、スローモーションを見ているかのような。
彼が直前で目を瞑ったのが視界に映る。
そして吸い込まれるように、
唇が重なった。
触れていたのは数秒間。
体感ではその何倍もの時間が過ぎ、その感覚を失った時。
「気をつけて」
顔が近づいたままの距離で彼がそう言った。
私は自分の意思とは関係なしに、
「はい」
と言葉を返していて。
二度目のキスに、何も考えられなくなっていた。
あなたに触れる、ゼロセンチ。
もう、あなたしか見えない。
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ルリ(プロフ) - 林檎さん» 林檎さま、返信が遅くなってしまい申し訳ございませんでした。私自身キュンが大好きなのでそう言っていただけるのが最上の褒め言葉です、ありがとうございます。更新が滞ってしまい申し訳ない限りですが、今後ともお付き合いいただけると嬉しいです^^ (6月1日 13時) (
レス) id: 9b3e1dd9b8 (このIDを非表示/違反報告)
林檎(プロフ) - キュン死しそうでした。素敵な作品をありがとうございます｡>_<｡お身体にお気をつけて (2023年4月14日 19時) (レス) @page26 id: 84e97ac5a3 (このIDを非表示/違反報告)
ルリ(プロフ) - まいさん» コメントありがとうございます。たくさんキュンとしていただけたみたいで嬉しいです。そしてファンとまで言っていただき恐縮です。全員分を同時進行で書いているので更新が遅くなってしまっていますが、末永くお付き合いいただけると嬉しいです^^ (2022年12月30日 15時) (レス) id: 9b3e1dd9b8 (このIDを非表示/違反報告)
まい - はじめまして！すごくおもしろくていっきに読ませて頂きました！きゅんきゅんが止まりませんーきゅんで死にそうです 笑 更新大変かと思いますが頑張ってください☆すっかりルリさんのファンになりました！ (2022年12月30日 0時) (レス) @page21 id: e5435e7bdd (このIDを非表示/違反報告)
ルリ(プロフ) - わこさん» 返信が遅くなりごめんなさい。どうもありがとうございます。 (2022年12月16日 19時) (レス) @page21 id: 9b3e1dd9b8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ルリ | 作成日時：2022年7月16日 17時
