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「まだ居たんだ、ジェミン」
「待っててあげたんだよ」
この会話は、互いに理解していなければ成立しない。私がテヨン先生に好意を抱いていること、ジェミンがそれを知っていること、そしてそれを口外してはならないこと。
更にその現状を知っているのは、私たち2人だけであることを。
彼の答えを聞いて、私が何をしていたのか、彼にはすべてお見通しなのだと認めざるを得なかった。彼は私のテヨン先生にまつわる盗み聞きが終わるまで『待っててくれた』のだった。
グラウンドの砂利を踏みしめる車輪のガタガタとした音は、私たちの会話を程よくかき消してくれた。そして話はようやく冒頭に戻る。
泣いた？と顔を覗き込んでくるジェミンを見下ろして、私は「泣いた」と真顔で嘘をつく。するとジェミンは「はは、噓つき。」と笑った。
「自分でも泣くかと思ったけど、案外涙って出ないもんだね」
「まだ実感できてないんじゃない？そういうのって遅れてやってくるものでしょ」
「そうなのかな」
私たちが体育倉庫を出ると既にクラスメイトたちは教室に戻ったらしく、テヨン先生は次の授業準備をしていた。
「2人とも最後までありがとう、早くしないと次の授業間に合わなくなっちゃうから戻りな？」
「先生に言われなくてもすぐ戻りますよ。ねえA？」
「え？あ、うん。急ぎます。」
なんだか刺々しい物言いのジェミンにテヨン先生は少しだけ眉を下げた。
八の字眉は端正な顔を幼く演出するも、髪をかきあげるときに光るシルバーが目について離れない。
綺麗だなあ。先生の白くて細い、節くれ立った指にぴったりと嵌められたそれはどんなに引っ張っても癒着して離れないんじゃないか、と錯覚するほどによく似合っている。
目元がじんわりと熱くなっていく。目尻が熱を帯びてきて、視界が段々ぼやけていくようだった。
あ、まずい。
遅れてやってきた感覚はあまりにも突然で、私は心の準備ができていなかった。
「行こう、A。本当に遅れる」
そのまま腕をつかんで、ジェミンに引きずられる形で私たちは駆け出した。前を行くジェミンは私を振り返ることなく更衣室の前までたどり着くと、やっとこちらを向く。
膝に手をついてぜえぜえと息を吐く私に対して、彼はけろりとした顔で「さっき泣きそうになってたでしょ」と言って中へ入っていった。
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マリン(プロフ) - ころころまんさん» ジェミンを応援したくなるというコメント本当に嬉しいです。最後まで主人公の味方になろうとする彼を書きたかったので……！コメントありがとうございました！ (2021年3月21日 12時) (
レス) id: 2096d89c8f (このIDを非表示/違反報告)
ころころまん(プロフ) - ジェミンの話が一番面白かったです。ドキドキするしジェミンを応援したくなるし、ジェミンっていいやつなんだなぁと私は感じました。また更新お待ちしています。こだわりのある感じがまた最高です。 (2021年3月21日 4時) (レス) id: ddd6b54eb6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：マリン | 作成日時：2021年2月15日 1時
