深淵の中で手を差し伸べて。:h【リヴァイ】 (ページ10)

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「……する事、ないなぁ。」

殺風景な風景を見詰めながらどことなく呟いた。ぼんやりとする意識の中、ジゼルの頭がゆらりゆらりと揺れ始めいつの間にかジゼルは夢の世界へと旅立っていった。

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「……エルヴィンの奴、糞みてぇな書類ばかり押し付けやがって。」

クソ野郎、と悪態をつきながらぎっしりと並べられた書類を睨み舌打ちを落とした俺。だがそれも仕方が無い。エルヴィンは王都に出向き、この上なく面倒な書類を全て俺に押し付けた。

クソ眼鏡は役に立たず副官であるモブリットが執務をこなしているが生憎俺には副官と言える兵士が居ない。否、副官を希望しなかったからの話だが。

文才が得意ではない俺は筆を離し、机の上に散らばる書類の束を睨んだ。果たしてこの書類に意味があるのだろうか。王政の豚共に送り付けたところでアイツらが理解するとは到底思えない。

あんな無駄に脂肪が詰まったような脳みそでは理解するにも出来ないんじゃないのか。そう思えば思うほど、自分の中でこれ以上にない苛立ちが募る。

忙しさのあまり、ここ最近はあのガキにも会っていない。それどころか目も合わしてもいない。ちっ、と舌打ちを落とした。

「リーヴァイ、居るっ？！」

その時、大きな音を立てて開け放たれた扉。そして、一番聞きたくなかったウザったい声に自然と肩が落ちた。

「…煩ぇ。」

「あ、やっぱ居た…っていうか、不機嫌だね。ジゼルと会えないのがそんなに辛い？辛いか！まぁ当たり前だよね！！！」

執務すらしていないクソ眼鏡は何に対して疲れているのか目の下に隈を作っていやがる。それもまた気に食わない。そしてこのテンションがこれ以上にないほどに鬱陶しい。

「俺は今猛烈に忙しい。用がないなら帰れ。」

ぶっきらぼうでいつもよりも何倍も低い声にハンジが大きくニンマリと笑った。

「いやあ、私も実験やら研究やらで疲れてたんだーけーど！大量の書類に追われて今にも人を殺してしまいそうなリヴァイにご褒美をやろうと思って！！！フフフフフ。」

「はあ？てめぇ、ふざけてるのか。」

「至って真面目だよ！そして真剣さ！そして君は喜ぶ！絶対に！確信できる！」

「……」

殺したい、と本気で思わせてくるコイツにある意味感心する。眉根の皺が濃くなったね、などといらない情報を突きつけてくるクソ眼鏡に向かって近くにあった本を思いっきり投げてやる。