深淵の中で手を差し伸べて。:h【リヴァイ】 (ページ32)

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「うわああああ…、あれがリヴァイなの？！」

あんなに浮かれて大丈夫なの！？と隣で信じられないものでも見るかのようなハンジの言葉にエルヴィンがくく、と声を押し殺して笑う。

それは数時間前の事。

ハンジが遊び心でジゼルを起こしに行こうとした時の事だった。まだ夜が明けたばかり、巨人の事についてジゼルと語り合おうとしたハンジはジゼルの部屋の扉を静かに開けた。

いつもの様に、おはよう、と気持ちよさそうに眠っているジゼルの肩を揺らして起こすだけ。それだけだと思っていたのに、今日は違った。息が止まるかと思った。…否、口から心臓がコンニチハするかと思った。

「リリリリリリリヴァーーーーイ！！！！！！な、なんでいるの！？えっ？もしかしてもうヤっちゃ、ぐふ…ッ。」

ハンジの叫び声はリヴァイが投げたであろう枕が顔面にヒットしたことによって治まった。

「煩ぇな…。おい奇行種、今何時だと思ってる。」

「そ…それを言うならなんでこんな時間にリヴァイがジゼルの部屋に……？もしかして、夜這い！？」

「あ゛？」

叫びたくなるのも無理はない。だってジゼルの部屋には、ベッドで眠っているジゼルと何故か読みかけであったのだろう本を持ちながらソファーの上でうつらうつらとしているリヴァイの姿があったから。

そしてなんとあろう事かジゼルとリヴァイの手は固く結ばれている。

……どういう事？

ハンジの頭の中に疑問が湧き出る。

眉根に皺を寄せ、不機嫌を顔に張りつけたリヴァイは眠っているジゼルに視線を落とすと、それは丁寧に優しく繋がれているジゼルの指を解き、ソファーから立ち上がる。

こんな繊細なリヴァイは見た事がない。ジゼルに対して心做しか優しくなったような気がする。まるで大切なものを扱うかのような手つきにハンジの口があんぐりと開いたまま停止した。