26-50 ページ27
ジゼルは小さな溜め息を吐きながら技術部の兵士の前に立体機動装置を持っていきトリガーの中身を見せる。首を傾げながらもジゼルの行動を見ていれば、
「見にくいのですが…、ここの部分にワイヤーが巻きついてしまっています。」
「どうしてこんなところにワイヤーが？」
「……さあ。なんででしょう…。」
「…どんな扱い方をすればこうなるんだ？……前代未聞だぞ。」
「流石はハンジさんです。」
「ったく、あの人の立体機動装置が不憫で仕方がないな。」
「ふふ、まぁそう言わずに。ここはあたしが直しておきますので他の立体機動装置の点検をお願いします。」
「ああわかった。頼んだよ。にしてもすげえ早業だよな、どうやったらそんなに早く分解できるんだ？」
「うーん…、なんでしょう。…慣れ、でしょうか？」
「慣れ、ね。俺はいつまで経っても慣れねぇよ。特にハンジ分隊長の立体機動装置は。」
「……まぁ、ハンジさんは特殊ですから。」
「あ、お前失礼だぞ。」
「そういう意味じゃないです！」
「はは、わかってるって。すまない。謝るからそんなに不貞腐れるな。……っとあまりサボってるわけにもいかねぇしここは頼んだ！じゃあな！」
こくり、と頷いたジゼルを見ながら腰を持ち上げた技術部の兵士は違う立体機動装置を手にし、手慣れた手つきで分解していった。
それにしてもワイヤーが巻きついていたとは。これで故障していないのが不思議だ。まぁ、この前の壁外調査でハンジさんの興奮っぷりはよく見ていたし、確かに立体機動装置の扱いも兵士の中でダントツ雑なのは確か。それを直すのがあたしの仕事なのだけれど。
「…ふぅ。出来た。」
かなりの時間をかけ、細いワイヤーを切除してやっと完了した。試しにトリガーを引けば先程よりもかなり軽くなっていて。
取り敢えずはこれでいいだろう、と判断したジゼルはハンジさんの立体機動装置を端に置き、エルヴィン団長に提出する報告書にハンジさんの名前と修理内容を記入した。
……ハンジさんがエルヴィン団長に叱られている場面を想像し、修理内容を空白にしようかとも思ったがそれではハンジさんの為にもならない、と首を振り正直に記入していく。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 25人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：るかこ。 | 作成日時：2020年4月30日 13時
