12話 ページ12
ある日、家計簿を見ながら思った。
アタシがバイトしたら旅行とか行けんちゃう?と。
生粋の旅行好きであるアタシは、大学時代に世界中を飛び回った経験もある。
社会人になってからは忙しくてあんま飛べてへんけど、アタシが働けば未来は見えんで。
「なぁ。アタシ、働こうかなって思って。まぁ家事とかもあるし、バイトになるんやけど」
それでもないよりマシやろ?と言って中まで火の通ったホクホクのジャガイモを食べる。
今日は洋風にしてみてんけど口に合うやろか。
しかし心配も無用らしく、もりもり食べてくれる宮に自然に頬が緩む。めっちゃかわええな自分。
やっぱり頭の中でゴールデンレトリーバーのモン太がチラつく。
実際のとこあのワンコの名前知らんねんけど、アタシはモン太って呼んどった。
「…なんで?俺の給料不満か?」
「いや、そー言うわけやないねんで?普通にお店も繁盛しとるし、お給料も同じ年代の社会人と比べたら稼いどる方ちゃう?」
「せやったらなんでAがバイトするん?」
せやからそれは…と言いかけてやめた。
旅行したいとかアホちゃうって話やし、もしかしたら宮はあんまり泊まるんが好きやないんかも。
なんか言いたいことあるんやったら言いや、と言った宮は私の皿からウインナーを持っていった。
バレてへんと思てんの?
「アタシさ、旅行好きやん」
「せやな。それがどないかしたん?」
「…お金あったら、旅行できそうやな、って思って。別に宮が旅行行きたないんやったらええんやけど」
宮が嫌なら別に、と言いつつ宮に取られたウインナーを救い出す。
旅行は全部アタシが稼ぐし、とボソボソ言っていると、ごくんと唐揚げを飲み込んだ宮はええんちゃう?と言った後、またウインナーを奪って口に放り込んだ。
アタシのウインナー…。
「…俺は、もうちょっとAと家で過ごしときたいわ」
「!」
なにそれ…ドキッとするやん。
驚いて、宮がアタシの皿から次々と食べ物を奪っとることなんか目に入らんかった。
なんなん。ホンマに。
彼氏みたいなこと言わんとってや、と思いながら、せやな、と返す。
あかんあかん、これは宮の天然たらしや。引っ掛かったら痛い目合うで。
そうやって引っかかって悲惨な目に合っとった女子何人も見てきたやん。
「バイトなんかせんでええわ、俺が養うんやから」
「…言うなぁ」
「それよりさ、ここ行かへん?」
「食べ放題?ええで」
今度の水曜な、と言った宮はまたアタシの皿から卵焼きを奪っていった。
宮への好きは友達か、アイドルに向ける好きと一緒やな。
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松々先輩(プロフ) - のんさん» ありがとうございます!!最近私生活も落ち着いてきたので、今日更新予定です! (8月5日 17時) (レス) id: 480ed93775 (このIDを非表示/違反報告)
のん - 久しぶりにこの神作品開いたけどやっぱり神作!!主様のペースでゆっくり更新続けて欲しい!!まぢ応援してます!無理は禁物!! (7月31日 11時) (レス) @page45 id: 7e78e362e0 (このIDを非表示/違反報告)
松々先輩(プロフ) - 雷さん» 大丈夫です。ありがとうございます頑張ります! (2022年8月12日 10時) (レス) id: 0b2f636a57 (このIDを非表示/違反報告)
雷 - 松々先輩『ありがとうございます頑張ります』が癖になってますけど大丈夫ですか? (2022年8月12日 10時) (レス) @page5 id: 1c759860fa (このIDを非表示/違反報告)
松々先輩(プロフ) - のんさん» ありがとうございます!頑張ります (2022年8月7日 0時) (レス) id: a6e4fce6a1 (このIDを非表示/違反報告)
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