潔癖執事とお嬢様【チョロ松】

執事が一人 ページ3

「起きてくださいお嬢様」
「ん〜…あと小一時間…」
「ダメです」


パシンッと誰かに(と言うか何かに)叩かれる。
何よ〜、とうっすら目を開けると、そこに佇むのは三度の飯より風呂が好きな私の執事が。

「あんたか…」
「私では不満ですか？ならお父上をお呼びいたしますが」
「おはようチョロ松！」

いやー、清々しい朝で。←

「おはようございます、お嬢様。お顔を洗ってください」

ニコッと私に笑いかけた顔。とても不愉快。
だって、いつも取ってつけたように同じ顔をするんだもの。


「て言うか何で叩いたのよ〜…毎朝叩き起こされる身にもなってよね」
「今日はハエたたきです。お嬢様が毎日気持ちよく、すぐに起きてくだされば、私も叩かないで済むので助かります」
「手で揺するとかあるじゃない！」
「私の手が汚れますので」


キラッキラの笑顔(メイドたちには人気)で笑いかける。
そんなに汚いか！？

「あ、お嬢様が毎日５時間洗った白いシーツと毛布、そしてネグリジェでお休みになられると言うのであれば、私も気持ちよく手で揺すり起こして差し上げますが」
「あんたの潔癖どうにかならない！？」

私の執事が潔癖すぎて困る。


「お父様！！」
「なんだ、A」
「あの執事どうにかならないわけ！？潔癖もあそこまできたら病気だわ！！」
「それはAが少しでも綺麗になって貰おうと、ワザとこうしてるんだ。Aがもう少し綺麗になれば、チョロ松も喜ぶんではないか？」
「冗談じゃないわよ！！どうして私がッ…「はい、そこまでですお嬢様。五分後に乗馬のレッスンがございます」ああぁああぁ！！！」


いつもこう！私がお父様に言おうと思えば遮られる！！

「…あの、大変申し上げにくいのですが」
「何よ」
「…お嬢様、１時間ほどお時間いただけないでしょうか？」
「？どうして」
「手に埃が」

手袋つけてるし私には塵一つ見えない掌を私に見せる。
いや、埃は！？

「良いけど帰ってくんな！！」
「レッスンにはちゃんと向かってくださいね、ではこれで」


全世界の見本になるような礼をして、ツカツカと歩いていく。
通るたびにメイドがきゃぁきゃぁ声を上げるが、私には理解できない。

「全く、あの執事は…あの潔癖どうにかならないかしら…」
「はは、またチョロ松兄さんの事〜？」
「笑い事じゃないわ、トド松せんせ！貴方もあの人と兄弟ならなんとか言って！？」
「無理無理！アレは誰にも治せないよー」
「やはりか！！！」

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