潔癖執事とお嬢様【チョロ松】

執事が十一人 ページ13

「休暇？」

はい、と呟いたチョロ松は、ジッと私を見つめた。

「少し、休暇が入りまして……」
「誰の？」
「おそ松兄さんが…」
「え、ぁ、おそ松が……」

じゃあ一体、私の話し相手は誰になるのか。
チョロ松の愚痴っぽいものを聞いてくれる人がいなくなる。


「その間、私がお嬢様の話し相手に…「えぇええぇ！？」…何か問題でも？」

問題大有りよ！愚痴が言えない！


ワナワナと震えていると、ところでいつも何を話しているんです？と首をかしげる。
言えません！口が裂けても言えない！

「……言えないことを話してるんですか？」
「そんなことないよー、チョロシコスキー」
「……まさか、その名前の由来は聞いてませんよね？」
「さぁ、それは知らないけど……」

そう言うと、安心したように胸をなでおろすチョロ松。
かなり気になってくる。


「で、名前の由来は？」
「……いえ、それは…聞かない方がよろしいかと……」


どうして？と訊くと、とにかく、お嬢様には教えられません。と、頑なに教えてくれない。
いつもチョロ松は私が訊けば教えてくれるし、隠したこともない。

よほどの理由があるのか

「………なんなのよー、気になるじゃない。教えて？」

チョロ松の顔を下から見つめていうと、その顔はずるいと思います。とベシッと顔を叩かれる。
なんの話かさっぱりで困惑していると、ジッと目を見つめられる。


「……お嬢様の目は、緑色なんですね」
「私の目を見たのなんて初めてじゃないでしょう？急にどうしたの」
「いえ…ただ………」


ゆっくりと微笑んだチョロ松は、私の目を見てこう言った。

「私の色だ、と思ったもので…」


静かな部屋の中で、チョロ松の声だけが響く。
とても心地いい。穏やかな風が陽だまりが少し入る窓から入ってきた。
時が止まったように固まる私を見てチョロ松が笑みをこぼす。

「…………っ…」

遅れて来た反応。
顔が熱い。それじゃまるで私がチョロ松の色に染まったみたいだわ。

「顔が赤いですよ？何かあったんですか？」
「っ…何もないわよ！は、離れてちょうだい」


鈍感潔癖ドSって、救いどころないじゃない。



少しドキッとしたのは秘密だけど。


「今日のおやつはシフォンケーキです」
「その前に外に行かない？」
「行きません」

即答かよ！と叫ぶと、汚れますので、とお茶を淹れながら話す。
確かに潔癖にはキツイかもしれない。

でも私は幼馴染。チョロ松の扱いくらい知ってるのよ。

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