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それで先輩との口説きあいは辞めて、他の相手を探してたら、そう、あいつがね。
飲み会に遅れて来たんだよ。
たまに見るけど、ちゃんと話したことはなかったなーと思ってあいつに声をかけた。
「なぁ、お前名前なんて言うん?」
「俺?久我怜央(くがれお)だよ。そっちはー…結城蓮(ゆうきれん)だよね。」
俺は驚いて目を開いた。だって、俺たちは初対面のはずだったから。
「…なんで俺の名前知ってるん。」
「え?だって蓮くんいつも笑顔で挨拶してくれるし、友達によく勉強聞いてたじゃん?真面目で良い子なんだなって思ってた」
「だから今こうやって話せてるのすごい嬉しい。」
そう怜央は柔らかく笑った。
「なんやお前。…調子狂うわ。」
大学に入ってそう赤裸々に褒められるのは初めてで、思わず彼のそっぽを向いてしまった。
その時、俺らの様子を見ていた先輩が言った。
「ねぇ、この二人で口説きあうのはどう?」って
な、なんで今言ったん…!?俺、こいつ相手やと多分負けるんやけど…!?
絶対嫌や、そう訴えるように先輩に目線を送っても、俺の意向は伝わらなかった。
そんな俺とは反対に怜央は乗り気で、どんな風に怜央が口説くのか見たかったのもあって俺は承諾した。
心を落ち着かせて、目を開く。…大丈夫大丈夫、さっきのはマグレかもしれん。
「…俺、勉強とか挨拶とか、ここ入って褒められたことなかった。やから、さっきそれ聞いた時めっちゃ嬉しかったねん。あんがと。」
「褒められるの好きなんだ?蓮ってそういうの嫌いだと思ってた。」
「…ん?お前嫌いだと思って褒めたん?それただの意地悪ちゃうか?このやろう、そのかっこいい髪ぐしゃぐしゃにしてやるわ!」
俺はそう言うと怜央の髪に手を伸ばして、遠慮なく頭を撫でた。感覚あれや、大型犬撫でてるみたいな
「え、ちょ。っはは!くすぐってぇ!やめてっ!セット崩れる!」
怜央は擽ったそうに笑って、頭を撫でる俺の両手を掴んで、顔の方へと落とした。そして俺の手に頭をこてんと、落として、頬を擦り付けた。
…なんやこいつあざといな。お互い顔くらいは知ってたといえど、話すの初めてやで?距離感って知っとるか。
そう思いながらも、不思議と不快感はなくて、寧ろ手に擦り寄ってくれることにどこか優越感を覚えていた。
「…なんやぁ、お前。犬みたいやな、かわええ」
そう自分でも分かるくらい顔を柔らかくして、怜央の頬を撫でたり、弱く抓ったりした。
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作者名:津城瑠生 x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ruimdk1/
作成日時:2022年11月20日 12時