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第71話:後悔 ページ9



日本代表の必殺タクティクスであるグリッドオメガを、イタリア代表が発動した。叩きつけられるように折り重なって倒れたフィールドに、観客達は息を飲み唖然とする。

このまま日本が立ち上がることができなければ、試合続行不可能と見なされてしまう。

「やられたよ。まさか、グリッドオメガまで研究していたなんてね」

イタリアの分析力をナメていた野坂は、顔を歪めながらもなんとか立ち上がる。それに続いて日本代表も次々と立ち上がっていく。一星、坂野上も同様だ。万作は風丸と水神矢に助けられている。

「この十一番に邪魔されたか.......」

ペトロニオが、這い蹲る灰崎を見下ろしながら呟く。致命傷にならなかったのは、彼の見たとおり、灰崎のおかげだ。フットボールフロンティア決勝の対抗策、真空波によるクッションをとっさに繰り出したのだ。

叩きつけられる直前に真空波を放った灰崎ではあったが、咄嗟の判断だったため体の制御がきかなかったか、アフロディ、日暮、海腹を守ることはできず。

「灰崎、く……」

灰崎の耳に、掠れた声が届く。

痛む体が言うことを聞かず、灰崎は這い蹲ったまま目だけを横に向けた。そこには、息絶え絶えに呼吸を繰り返すAの姿。目を開けるのも困難なのか、眉間には深いシワが刻まれている。


「ごめ、ん……わたし」


三つ編みにしていた横髪は解け、頬には真新しい擦り傷などが目立つ。そんな中でAが口にしたのは、灰崎への謝罪の言葉だった。

「なんで、お前が謝るんだよ!」

軋むような痛みが体を襲う。だが灰崎は、顔をフィールドに擦り付けたまま精一杯の声を振り絞った。するとAは、眉を情けなく八の字に寄せて言う。

「だって……こんな近くにいるのに守れなかったら、きっと今の灰崎くんは自分を責める、から。……それだけはしてほしく、なくて」

途切れ途切れに紡いだ言葉を言い終えると、Aは最後に力なく笑った後、押し開かれていた瞼が限界を迎えたかのように閉じていく。

「A……」

名前を呼んでも、返事は返ってこない。気を失ってもなお、その口元は柔らかく笑んでいる。その笑顔さえ、今の灰崎の心を抉るには十分なものだった。

「また、守れなかったっていうのかよ……俺は!」

芝生を握りしめながら、顔をようやく上げた灰崎の目の前にはボロボロの姿で気を失ったAの痛ましい姿。自分の近くにいたにも関わらず、ほんの僅かなズレが生じて守りきることができなかったのだ。

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設定タグ:イナズマイレブン , オリオンの刻印 , 吉良ヒロト   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:小雪 | 作成日時:2019年10月15日 21時

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