致命傷 ページ6
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ウラジミールの監督就任、サポーター。そして、ガブリエラの負傷退場。様々な出来事が重なって生まれた激昴。血迷った明日人が出した苦渋の決断に、誰もが固唾を飲み、驚いていた。
「グリッドオメガを使えば、すでにダメージを受けている選手たちにとって致命的なことになりかねない!」
真っ先に反対の意を示したのは風丸だ。彼が思いだすのは、星章対王帝月ノ宮戦だ。グリッドオメガを前に手も足も出せず、星章選手たちが次々とフィールドに叩きつけられた衝撃は今でも忘れられない。
「それに、グリッドオメガがどんなに危険なものか身をもって体験したあんたも知ってるはずよ」
二転三転する発言に、今までの積み重なった明日人への不平不愉快がAの中で一時に爆発し、洪河の決潰する勢いをもって静かに睨めつけ、苦言を呈した。
「いい加減、その沸騰した頭を冷やしなさい」
彼女にとってもグリッドオメガは恐怖を与えるトラウマだと言える。明日人もそれを知らないはずがない。
「明日人さん、どうしちゃったんですか」
空気が張り詰める中、坂野上は唯一野坂の案に声を上げて反対して、正々堂々サッカーすることを選んだはずの明日人の変貌に、戸惑いを隠せないでいた。
「これでイタリアを助けるんだ」
「イタリアを助ける?どういうことよ」
__明日人には確かな勝算があった。
どうやら無闇矢鱈な発言をしたわけではないようだ。「え?」と、首を傾げ合うAと坂野上から視線を逸らした明日人が、キャプテンである野坂に相談する。
「グリッドオメガを、ただ直撃させるんじゃない。新しい形で使ってみんなを気絶させるんだ」
「そうして戦えなくなったように見せかければ、試合は中止され、選手たちは助かる」
意図を察した野坂が続けた。
彼の口元が僅かにつり上がっているように見えるのは、気のせいだろうか。「そういうことですか……」と理屈の通った作戦に、坂野上が納得の声を上げた。
「でも、そんなことができるの?付け焼き刃のタクティクスで、もしも威力を軽減することができなかったらそれこそ大問題よ。下手をすれば日本が負けるわ」
Aが手を挙げ、不安の声をあらわにする。
「悪いけど、私はこの作戦に反対」
仮にもこの試合は、世界大会の生中継だ。全世界が注目するこの試合の中で、もしも日本が卑怯な手を使って相手選手に致命傷を負わせるようなことがあれば、メディアからも批判の声を浴びることとなるだろう。
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作者名:小雪 | 作成日時:2019年10月15日 21時