騎士の誇り ページ3
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「もっとやろうよ!命令されてやるサッカーなんかじゃなくて、自分たちの……」
「私だって!」
口を挟ませまいとするかのように声高にしゃべり続けていた明日人の腕を払って、ペトロニオが叫んだ。
「そうできたらいいと思うさ!」
二人を見下ろすその眼差しからは、ペトロニオの心に残る悲願の思いが切々と感じられた。
「だったらどうして!?」
聞き分けのない明日人に対して、イタリア選手は誰も目を合わせようとしなかった。ただ言われた通りに、一度外したサポーターを腕や足に装着していく。そしてカルロスが、チームの総意を表明する。
「俺たちは、ガーディアンズ・オブ・クイーン。騎士として当然のことだ!」
イタリアの固く揺るがない決意をひしひしとその身に感じた明日人は、カルロスたちとペトロニオを、そしてウラジミールとを順に見て奥歯を噛み締めた。
「明日人、もう戻ろう。試合もそろそろ始まるから」
「……ッ!」
背を向けて、拳を震わせる明日人を宥めるようにAが優しく声をかける。すると明日人は、何かを訴えるような悔しげな顔でAに振り返った後、何も言わずに地面を踏み鳴らして先にひき返していった。
「明日人…」
明日人の背中に向かって手を伸ばしていた手が、ぷつりと糸が切れたような音を立てて力なく垂れる。
「はぁ……」
詰まるような息を吐ききって、Aは踵を翻す。
余所者が口を挟んで敵地にのこのこ現れたことにイタリア選手達は不信感を抱いていた。その全てを踏まえて、Aは誠意を持って彼らに頭を下げた。
「すみませんでした。うちの選手がとんだご無礼を」
上半身を折り、深々と頭を下げるAの姿を前にしたアリーチェ達は顔を見合わせる。頷いたペトロニオが代表して声をかけようとした、その時。
「__まったくだ」
ペトロニオよりも先に声を発した男がいた。……ウラジミールだ。その場にいた者たちの視線が集まる中、彼はピクリとも動かずに鼻でAを嘲笑う。
「飼い犬にはしっかりと首輪をつけてもらわないとな。お前もそう思うだろ?日暮A」
「……ッ!!」
明日人を狂犬に例えての侮辱行為。憤りを感じないわけがなかった。現に、今にも爆発しそうな憤りを抑えるかのごとく、Aの拳が小刻みに震えていた。
「失礼します」
ここで言い争うことは好ましくないと冷静に判断をしたAはウラジミールを睨みつけた後、イタリア選手達に会釈をすると日本ベンチへと帰って行った。
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作者名:小雪 | 作成日時:2019年10月15日 21時