目覚め ページ15
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＿＿小僧丸が熱烈な思いを豪炎寺に伝える中、グリッドオメガの強襲を受けて気を失っていた少女の眉が痙攣するようにぴくりと動いた。
｢ん、…｣
人々の歓声がやまびこのように木霊して、遠くの方で聞こえる。重く閉ざされた暗闇の中で眩しい光が輝きを増し始めると、その音もだんだんと大きくなり、少女の意識を一気に現実へと引き戻した。
｢A！｣
意識が戻った少女の耳に一番初めに届いたのは、歓声でもない切羽詰まった少年の声。
いつだったか、前にも似たようなことが起きた気がする……Aは、ぼーっとする頭で、視界いっぱいに広がる白いメッシュの入った髪を見つめながら思う。
｢ひろ、と……？｣
驚く程に掠れた声でその名前を呼ぶと、少年は目を見開いた後、ぐっ…と何かを堪えたような顔をした。
｢ったく、余計な心配かけさせてんじゃねーよ｣
｢痛い｣
｢痛くしてんだから当たり前だろ｣
こつん、と人差し指の裏で額をつつかれる。その声は、普段よりも少しだけ優しいものだった。本当に心配していたのだろう、細く切れた眉は情けなく垂れ下がり、瞳は少しだけ潤んでいるように見えた。
｢マネージャー、こいつ起きたぜ｣
横たわるAを親指で指したヒロトが、替えのタオルを用意していたつくしに呼びかける。
｢本当！？｣という声を聞き流しながら、Aはまだ視界のはっきりとしない虚ろな瞳で空を眺めた。
｢私、どうなったんだっけ……｣
うわ言のように、ぽつりと呟く。
｢あ？お前覚えてないのかよ。相手のタクティクスをまともに食らって、気ぃ失ってただろうが｣
か細い声は人々の歓声によって掻き消されてしまったが、傍にいたヒロトの耳には届いていたようだ。
Aは働かない頭を使って、ヒロトの言葉を頼りに失われていた記憶を辿りはじめる。
｢そうだ、私……あの時、明日人の提案でグリッドオメガを打とうとして……でもそのあと、ペトロニオが野坂くんからボールを奪って、それで｣
そこまで言いかけると、からAははっと息を飲み込んだ。脳に流れ込んでくるのはグリッドオメガを放つ直前の記憶、そしてペトロニオの手から赤い竜巻のオーラが放たれた瞬間の映像。
｢それ、で｣
＿＿全てを思い出したAの目が、見開かれる。
｢みんなは!?……いっ、！｣
弾かれるように起き上がったAは声を上げて問いかける。だが、ほんの僅かな衝撃でも脳に反動を起こしてしまったのか、鈍い激痛が体全身に走った。
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作者名：小雪
| 作成日時：2019年10月15日 21時
