心拍数 ページ8
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｢いいですね〜水神矢くん｣
趙金雲もご満悦のご様子だ。水神矢の加入によって、日本の個性にも変化が表れたと、杏奈が言う。それは大変喜ばしいことであり、新メンバーが加わったことで、日本代表はまた一段と変化した。
試合は、ブラジルボールで再開されるが、時間切れを知らせる長いホイッスルが鳴り会場全体に鳴り響いた。
その笛の音が選手達の耳から脳へと伝わると、糸が切れた人形のように、次々フィールドに横たわるように伸びる。
｢や、やった……勝ったー……｣
光り輝く太陽に向かって両手を掲げるように思いっきり伸びをして、気の抜けた声と共にAは、へなへなと背中から後ろへと倒れた。
｢間一髪だったけどな｣
｢あ……｣
その声と共に、眩しかった太陽がちょうど隠れて、Aの頭上に影が覆う。丸くつり上がった瞳をぱちくりと瞬かせながら、視界いっぱいに広がる褐色肌の顔を見つめていた。
｢そんなところで寝てんじゃねぇよ｣
｢はっ……灰崎くん！？｣
自分を見下す人物が灰崎と知り、目がかち合うと、熱に浮かされてぼーっとしていたAの体がバネのように勢いよく弾んで、上体が半分起き上がる。
｢顔赤ぇ｣
｢こ、これはほら、あれよあれ！試合で動いたから｣
指摘をされると、ますます体が熱くなる。
何とか誤魔化そうと苦しい言い訳をして、片手を煽ぐも、ジト目で見られているその恥ずかしさから身体中の熱が一気に顔へ集中し、ゆでダコのように真っ赤に染まっていく。
｢聞いてねぇ｣
Aが必死になって風を手で送っている間に、灰崎は彼女の後ろに回って腰を下ろす。
ぴた…っと背中に、何か固いものが当たるような感覚を味わう。恐る恐る首を後ろに回すと
｢な…っ！｣
そこには灰崎の姿。感じた固いものとは、灰崎が凭れるように背中を預けていたという事実を伝えていた。口が酸素を求める金魚のように開閉を繰り返し、やっとのことで、Aは声を振り絞る。
｢な、ななな…何してんのよ！｣
｢あ？何が｣
｢何がって…せ、背中！｣
｢減るもんでもねーんだし、いいだろ別に｣
舌を鳴らし、面倒くさそうな顔を斜めに向けてくる灰崎。互いの距離がますます近くなり、思わずひゅっと息を呑む。
｢そ、そういう問題じゃなくて！｣
｢うるせー。疲れてんだよ、こっちは｣
どん、と凭れる灰崎に声にならない声を上げると、Aは首の関節がおかしくなるのではないかと心配になるほど、勢いよく顔を元の位置に戻した。
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作者名：小雪
| 作成日時：2019年9月18日 14時
