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受け売り ページ5



「(私にも必殺技があれば…)」

雲をつかむような淡い思いを抱きながら、自分の不甲斐なさに頭を振って、視界をシャットアウトするように、瞼を閉ざしてしまったのがいけなかった。

「いきましたよ、Aさん!」

【あーっと!日暮、ここで痛恨のトラップミス!】

その声にハッとして目を開けた時には、アルトゥールとミゲルがAの左右を走り抜けて行ってしまう。「何もなしかよ」と少々がっかりしたようなミゲルの声が確かに聞こえ、Aは俯いて肩を落とす。


__実況解説席にて。

【考え事でもしていたのでしょうか?】

棒立ちのまま反応ができず、抜かれてしまったAに観客席からは残念そうな声が次々と上がっている。実況者は彼女の身に起きた出来事について、角馬へと訊ねた。

【何せ準決勝が賭けられた試合ですからね。先程の一点が選手達の胸にも重くのしかかっているのでしょう。そのプレッシャーこそが、彼女のプレーにも影響を及ぼしていたのかもしれません】

十分に、集中してほしいところですね……と、最後に角馬らしい辛辣な言葉が添えられる。その実況をスタンドから通して聞いていたAは、ますます己を追い詰める。

「ごめん、光くん」

「ドンマイです、Aさん!」

申し訳なさそうに眉を垂らし、情けない声で謝るAの右肩を軽く叩いて、そう励ます一星。だが、彼女の気分は晴れる様子はない。

「気にせず、ガンガン行きましょう!」

「でも…」

そんな弱々しい声を出して、Aはまた俯いてしまう。一度相手に抜かれてしまっただけだというのに、この落ち込みよう。何かあることは明白だが、一星には分かるはずもなかった。

「抜かれたら、諦めずに何度でも食らいついていけばいいんです。いつもの明日人くんみたいに!」

ほら、見てください……一星はそう言って、何度抜かれても諦めずにボールに食らいついていく明日人を指さす。

その指先につられて、Aも表を上げると、フィールドを駆け回る明日人を見つめた。

「Aさんが何に悩んでいるのか、考えましたけど……俺には分かりませんでした。だけど……あんな風に何も考えないで、フィールドをただ駆け回っているだけでも、楽しいかもしれませんよ」

「光くん…」

まあ、受け売りなんですけどね……と少しカッコをつけた後に、頬を掻いた一星が苦笑しながら言う。サッカーは何も、せめぎ合うだけの競技ではない。仲間と助け合い、励まし合う事が一番大切なのだ。

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設定タグ:イナズマイレブン , 吉良ヒロト , 灰崎凌兵   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:小雪 | 作成日時:2019年9月18日 14時

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