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羽休め ページ27



時刻が、正午を回った頃。

「え…フリータイム!?」

ミーティングルームに、Aの声が響き渡った。数秒前、析谷から練習メニューを報告するとの知らせを受けて朝食後に集まった矢先に告げられた事実に、辺りは騒がしくざわめいていた。

「本戦が始まってから練習ばかりが続いていたからね、たまには休憩も必要だ。みんな今日一日は伸び伸びと過ごしていいよ」

体を動かしてばかりでは、これから熾烈を極める戦いに影響をきたすやもしない。そこでフィジカルトレーナーである析谷が、選手の羽休みを提案。

「そのかわり、トレーニングは禁止だ。あくまでゆっくり体を休めること。特別に外出許可も出してあるから、久しぶりに街を観光するのもいいぞ」

ロシアに来たその日以来、まともな観光をイナズマジャパンはしていない。時には自然に触れ、その場所を見て歩くだけでも良い気分転換になるだろう。


析谷のおかげで、すっかりミーティングルームは休暇ムードに包まれる。体を翻し、街の観光を誘うものやどう過ごすのかを話し合う中、一人だけその提案に意義を唱えるものがいた。

「待ってください!私はその提案に反対です」

__Aだ。彼女は痛々しい傷を頬に残したまま、眉間を寄せて椅子から立ち上がり、意見する。


「出たぜ、堅物の意見。これだから優等生は」

椅子の背もたれに片腕をかけていたアツヤが、空気の読めない発言をした彼女に野次を飛ばす。

「そうたぜ日暮。休むことも立派な特訓の一つだ」

「剛陣さんは黙っててください」

我ながらいいことを言った、と一人満足気に頷く剛陣にAからの冷たい言葉が突き刺さる。大袈裟にリアクションをして、椅子から転げ落ちた剛陣は「なんで、俺だけ」と、嘆いていた。

「オリオン財団が率いる魔女の軍団と戦う日が刻一刻と迫っているんですよ?今は一秒でも早く、練習に身を投じるべきなのに!」

まるで裁判所で弁護士が裁判官に意義を唱える時のように机を叩いたAが、析谷に訴えかける。

その姿にアツヤが首を振って呆れた姿勢を見せるが、中には肯定派の意見も多数寄せられた。

「Aの気持ちもわかる。確かに今は時間が惜しい」

「なら!」

「だけど、羽を休めるのも充分必要なことなんだ」

言いかけた言葉を飲み込んで、Aは俯く。

選手にもしものことがあれば、それはフィジカルトレーナーである析谷や監督の責任問題にも繋がってしまう。厳しいが、それが世の習いというものだ。

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設定タグ:イナズマイレブン , 吉良ヒロト , 灰崎凌兵   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:小雪 | 作成日時:2019年9月18日 14時

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