第69話:魔女の軍団 ページ14
❀
日本が、ブラジルに勝利を果たした翌日。
イナズマジャパンの次なる対戦相手が決まったと、析谷から報告を受けた選手達は、朝から施設内にあるスタジアムに集められていた。そこで彼らは、監督の趙金雲から驚くべき言葉を告げられる。
＿＿日本はこのままでは勝てない、と。
｢このままじゃ勝てない？どういうことです？｣
その口述に思わず円堂は、グローブをはめようとしていた手を、まるでＴＶドラマの場面みたいに止めて、暫しきょとん、としてしまった。驚いたのだ。
｢どういうことも何も、言葉の通り。今の日本じゃイタリアには勝てないということです｣
まるで他人事のように、監督は淡々と言った。
公式戦は残り二試合と佳境に入り、ここまで勝ち上がったチームであれば、よほどの一強、二強の時代でもない限り、そこまで大きな実力差があると思えないが、趙金雲は子文も使って危機感を煽りだす。
｢ガーディアンズ・オブ・クイーンはその名の通り、女王を守護する形で構成されたチームなんです｣
子文の裏を返せば、オリオンに心酔する者達が集められたチームと言っても過言ではないだろう。すると、Aが胸元の位置で控えめに手を上げた。
｢つまり、その人が監督ってこと？｣
｢いいえ。監督はまた別にいますよ｣
｢じゃあ、その人はどういう立場なんです？｣
監督でないとなれば、コーチという立場も怪しいところだ。探りを入れて、Aは質問を投げかけると、狐のように閉じられた監督の細い目がゆっくり開かれていく。
｢彼らが絶対の服従を持っている女王さんの名前は……" イリーナ " ｣
｢…!!｣
指を立てた監督が告げた名前に、周りの者達が首を傾げ合う中、はっとAだけが大きな目を見開いていた。教師に突然名指しされた生徒のように。
｢(確か、あの女の人もイリーナって呼ばれてた)｣
先日のブラジル戦のハーフタイム中にて、水道場で出会った女性の姿をAは連想させた。
凛とした容貌でありながらも、どこかトゲのある目つきは、 一度会えば忘れられることなどできない。それほど強い印象を、Aに与えていた。
｢(やっぱり、オリオン財団の関係者だったんだ)｣
口には出さず、心の中で勝手に一人で推測すると、Aは視線を上げて、耳を監督に傾ける。
｢これが怖い人でしてね〜｣
両手を組み、怯えた様子で訴える監督。その動作やしゃべり方には少なからず演技的な部分があり、心にもないことを言っているのが見て取れた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 132人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「イナズマイレブン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：小雪
| 作成日時：2019年9月18日 14時
