コピー ページ11
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「僕はルース・カシム。稲森明日人の代役を務めていた」
バンダナを下から上へ剥ぎ取り、改めて自己紹介をしたその少年はルースと名乗る。彼も新条によって集められた、革命軍の一人なのだそう。
「同じ革命軍の一人として宜しく」
「こ、こちらこそ」
歩み寄り、手を差し出してきたルースに合わせて、困惑の色を隠せないまま握手に応じるA。クールな見た目とは裏腹に、優しい笑みを頬に堪えるルースに、いつしか警戒心を無くしていた。
「それよりもA、準決勝進出おめでとう!」
「ありがとう、マリクくん」
「すごい試合だったね!僕、最後は感動した!」
「うん。最後はどっちも全力を出し切れたからね」
小さな両腕をめいっぱいに広げて「みんなすごくキラキラしてた!」と嬉しそうに話すマリク。興奮気味な彼の様子に、ルースは「試合が終わってからずっとこんな調子だ」後ろ指を指しながら苦笑していた。
「そういうロシアも、四日後が試合よね」
「あぁ。僕たちの対戦相手は明日決まる」
「そっか……あなたもロシア代表に?」
未だ目を輝かせているマリクの隣で、ルースが静かに頷く。 彼曰く、FFI決勝大会から新たなロシアのチームメンバーとして加わったらしい。
「それにしても、本当にすごいわね」
「何が?」
「明日人の技を完コピしちゃうなんて」
Aの口から感慨深そうな声が漏れると、あぁ…その話か、と目を細めたルースは顎に手を添える。技をコピーできる能力を持つルースは、日本にとっても脅威の存在になることは間違いないだろう。
「試合前に、新条さんから彼に関するデータを徹底的に調べさせてもらったんだ。それだけだよ」
「それだけで出来ちゃうものなの?」
「練習さえすればどんな技でもこなせるさ」
きょとん、とした顔で首を傾げる彼女に、「中々の名演技だったろ?」と口角を上げて、さも当然のように言ってのけるルース。Aは思わずその姿に、賞賛の手を叩きたくなった。
「どうかしたの?」
ふと、Aがマリクの様子が気にかかり、声をかけた。先程までの楽しそうな姿とは一変して、今は不安気な面持ちで辺りを忙しなく見回している。
「フロイのやつを見なかったか?」
見兼ねたルースが、代わりにAへ問いかけた。
「見てないけど……一緒じゃなかったの?」
「一緒だったよ!一緒だった、けど…」
強気だったマリクの声も、話していくうちにだんだんと、自信を無くしたように、尻すぼみになった。
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作者名:小雪 | 作成日時:2019年9月18日 14時