懸念 ページ2
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アルトゥールの強烈な必殺技に対し、円堂の対抗技は「ダイヤモンドパンチ」苦戦を強いられたものの、なんとかライン外まで弾くことに成功。その際に右手が痺れたのか、円堂は左手で手首をつかむ。
｢すげぇじゃねぇか、ブラジル｣
｢円堂さん！｣
気がついたAが、血相を変えてやってくる。
｢手、大丈夫ですか？｣
｢あぁ。このくらいどうってことはない！｣
懸念するAに心配をかけまいと、円堂は痺れを払うように手を上下に振ってみせる。そして白い歯を剥き出しにして円堂が笑顔を見せれば、つられるようにAの頬も少しだけ緩んだ。
｢俺達も負けてらんねーぞ！」
気持ちのいいシュートに、本人はいつになく楽しそうだ。それは、技を止められてしまったアルトゥールも同じこと。彼の心にも、不思議と焦りや悔しさなどと言った感情は湧いてこなかったのだ。
｢試合の雰囲気が完全に変わったね｣
明らかに戦い方やプレースタイルが変わったブラジルチームに対し、野坂が冷静な見解を述べるその隣で｢はい｣と一星が短く返事をする。
｢だけど、みんな活き活きしてすごく楽しそう｣
日本の窮地でもあるというのに、Aは関係なく、アルトゥール達が肩を組んで励まし合うその姿を見つめて自分のことのように喜んでいた。
すると、水神矢が言う。
｢どうやら、俺達のメッセージは通じたようだ」
｢こんな方法で考えを変えられるとはな」
天地がひっくり返るような奇を衒った作戦が、一つのチームを救った。その事実を目の当たりにした剛陣が、信じられないというふうに驚いているのに対し、水神矢は冷静に言葉を返す。
「考えを変えたりはしていない。彼らは最初から、汚いプレーをしたいとは思っていなかった。自分と向き合う勇気を出せただけさ。自分が本当にやりたいことに、やるべきことに気づいたんだ」
結果として、ブラジル代表の本質を見抜けたのは、水神矢の事前の全試合分析の成果である。そう褒める野坂に対し、水神矢は後ろにいる灰崎をわざとらしく一瞥して軽口で返す。
｢素直じゃないやつの扱い方には、慣れてるだけさ」
｢あぁ!?｣
｢ふふ…っ｣
急に話の矛先が飛んできた灰崎が反応すると、隣にいたAがクスッと小さな笑いを零してから｢それは言えてるかも｣口元に手を当てそう言った。
(おい！お前まで何ニヤついてやがる！)
(だって、水神矢くんの言う通りすぎるんだもん)
(言われてるぞ、灰崎)
(完璧お前のせいだろ!!)
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作者名：小雪
| 作成日時：2019年9月18日 14時
