ヤキモチ妬き ページ9
❀
ヒロトは組んでいた腕の人差し指で二の腕を叩き始めた。先程からガンを飛ばす視線を向けてもアフロディは涼しい顔をしてAと親しげに話している。
「ベタベタしやがって、クソ…」
ただでさえ同じ神を名乗るものとして彼の存在が気に入らないというのに好意を抱いている少女と急接近しているのが何よりも気に食わないらしい。
「落ち着いてください」
「あぁ？」
そんなヒロトの苛立ちを傍で感じていた
光が宥めるような優しい口調で云うが
憤りがおさまるはずもなく火粉が飛んだ。
「そういうお前はイライラしねぇのかよ」
心の奥底から沸き上がる震えを覚えるばかりに激昂した神経を両手に集めて、指をバラバラに動かしては恨めしそうにアフロディを睨めつける。
「イライラ、というか」
「するだろ」
「……しない、と言えば嘘になりますけど」
敵対視するヒロトとは裏腹に光は弱ったように眉を垂らしていた。そして頬を人差し指で掻きながら視線をあの二人に移す。
「でも、先輩にその気がないということは分かってますから」
親しげな会話と言うよりは、アフロディが一方的にAに話を振っているようにも見える。
その度にヒロトの顔を盗み見ていたことから、これは彼の確信的な行動だと察することができた。
「随分余裕だな、お前」
「そ、そんなつもりは……」
何か隠し事をしているのではないかと、腰に手を当て、探るような眼差しで顔を近づけてくるヒロトに光は内心ヒヤヒヤしながらも平然を装う。
「ほら、あの二人は元々知り合いだったみたいですし！単純に再会を喜んでいるだけかと思われます」
「再会、なぁ？」
すんと細められた猫なように丸い瞳が再びA達に向けられる。同時に、意識が自分から逸れたことに光は安心したように安堵の息を漏らした。
「にしては距離近すぎねぇか？」
握手を交わしてから一度は離れていた
二人の手も目を離した隙に、再び
包みこまれるように握られている。
「……よし」
「ヒロトさん？どこへ」
「決まってんだろ」
口角を上げてはっと笑ったヒロトは顔を前に戻すと大股で歩き始める。そして、道場破りをしにきた輩のように二人の間に割って入ると繋がれた手を忌々しげに睨めつけ、右腕を一気に振り下ろした。
(言いたいことがあるなら言えよこのブス！)
(ヒロトよりずっと神様っぽいっていうこと？)
(おまっ…！今の今までそんなこと思ってたのかよ)
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作者名：小雪
| 作成日時：2019年5月15日 0時
