暗示 ページ41
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追加点を奪われたアメリカ代表ボールから試合がリスタート。開始早々、ネイビーインベーダーは慎重にパスを繋いで日本陣内へ切り込んでいく。
「なんだそういうことかよ」
手のサインで指示を送り合うが故に生まれた隙。先回りをすればこちらのものだ。
ヒロトは事前にパスが繰り出されるであろう選手に目を走らせるとその背後へと回り込む。
「ナイスカット ヒロト!その調子!」
「…っ」
敵の不意をついた見事なプレーでボールをかっさらうことに成功したヒロトに向かってAがベンチから掛け声を送ると、その声が届いたのか彼は人差し指で頬をかいてから気恥しそうにそっぽを向いた。
「ヒロトくん!」
ドリブルを続けるヒロトの左サイドからボールを回すよう指示を送ったのはアフロディだ。再び「ヘブンズタイム」を繰り出すつもりだろう。ヒロトもそれを承知の上でアフロディへとボールを託す。
「ヘブンズタイム」
迫り来るアメリカ選手に余裕の笑みを口元に浮かべたアフロディは左腕をかかげて指を鳴らす。辺りは先程同然、凍りついたように時間が止まった。
しかし、次の瞬間。
「なに!?」
止まっていたはずの敵が自らの意思で動き出した。同時に、辺りを覆っていた空間も破壊されてしまう。完全に油断をしていたアフロディは相手のスライディングによりボールを奪われた。
会場は一時騒然なり、動揺の波に揺れ動く。
フィールドにいた選手たちは一瞬
何が起きたのか理解が思考が追いつかなかった。
無論、それは控えにいる者も同じこと。
「ヘブンズタイムが無効化された!?」
「どうなっているんだ、アメリカ代表のヤツら」
目を疑うようなその光景にAは思わず席を立ち上がってしまう。砂木沼は腕を組みながらどっしりと構えているものの声色から焦りが滲み出ている。
「親分、どういうことでしょうか」
中国拳法を得意とする子文にすら、アメリカ代表が一体何をしたのか視線で追うことができなかった。
そんな彼が全てを見通していたであろう親分こと、趙金雲に問いかければ皆の視線は彼に注がれる。
「ヘブンズタイムは一種の暗示。マジックの視線誘導の要領で相手の意識を暗示にかけ、時間が止まったように錯覚しているにすぎません」
ベンチから腰を上げ、歩き出した監督は愕然とするアフロディの姿を見据えながら説明した。彼らはあの僅かな間にそれを見抜き、その対策を図りヘブンズタイムを打ち破る実行を移したのだ。
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作者名:小雪 | 作成日時:2019年5月15日 0時