遊園地の余韻 ページ32
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アメリカ対日本の試合が間もなく始まろうとしていた。スペインと引き分けた日本とロシアを破ったアメリカの戦いに観客の興奮も既に最高潮をむかえている。
その中で注目するのは日本代表に新たに召集された天空の支配者との異名を持つ亜風炉照美の存在。
そしてアメリカ代表。代表選手全員を総入れ替えという前代未聞の事態となっている。練習中に怪我をしたと知らされているというのだから都合が良い。
「何が練習中による怪我よ、白々しいわね」
「はっ。言わせてろ、ぶっ飛ばせば済む話だ」
隠蔽された真実にAは解せないという顔で毒を吐く。その隣ではヒロトが相も変わらず敵を見下す姿勢を変えずに自信満々に言っている。
「たく、不気味な奴らだ」
「十一人全員がオリオンとはな」
灰崎と氷浦もまた、警戒を張り巡らせるような厳しい眼差しでアメリカチームを睨めつけている。
「おもしれえじゃねぇか。ふざけた真似してきても全員ぶっ潰してやる」
「でも不動くん、相手がまた何を仕掛けてくるか分からないから注意して動かないと」
拳を手のひらに打ち付けて豪語した不動に対し、Aは優しく進言する。
一之瀬達を潰した地雷のようなトラップも野坂と光の分析を持ってしても結局は分からずじまいで終わり、試合当日までに見破るには至らなかった。
「そういえば昨日、アフロディとヒロトと三人で遊園地に行ってたみたいだけど」
ふと、そんな風丸の声がAの耳に届き、彼女は視線だけをちらりと動かして横目を走らせる。そこには何故か目を渦巻きのように回している岩戸とそれを支える剛陣の姿が見えた。
「メリーゴーランドとコーヒーカップだけは楽しかったな」
「(乙女か)」
だけ、をあくまで強調させたヒロト。
意外とメルヘンチックな彼にAは
心の中で思わずツッコんだ。
「有意義な時間だったね。ヒロトくん、ゴーレムくん」
「お、思い出しただけでも目が……」
清々しい表情をしたアフロディとは違い、ヒロトこさ腕を組んで平然を装ってはいるが、岩戸はそれこそ顔面を蒼白させて今にもぶっ倒れそうだった。
「あの……アフロディさん」
「なんだい?日暮さん」
あまりにも不憫すぎる岩戸に、何があったのか気になったAは手招きをするように腕を振って呼びかける。するとアフロディは足早にやってきた。
(あの、ヒロト達と遊園地行ってきたんですよね?)
(あぁ、すごく楽しかったよ!)
(そうじゃなくて)
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作者名:小雪 | 作成日時:2019年5月15日 0時