尊重 ページ17
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「あんたは私と連携技を作るの、今でも嫌？」
髪の黒さと唇の紅さが白い肌をより引き立て、自らの片腕を抱き寄せるように掴んだまま不安気な瞳で少年を見据える少女は、周りの騒がしい声の中に今にも消えてしまいそうなほど儚げだった。
「必殺技を作るにはお互いの気持ちが一番重要だって前に野坂くんが言ってた。もし私のわがままでヒロトの気持ちを尊重していないなら、私は＿＿＿」
「嫌だったら！」
Aの言葉を中途から奪って断句を投げ入れる。伏し目がちだった彼女の視線は足元からゆっくりと上にあがり、ヒロトへと注がれた。
「必死になったりしねぇ」
「ヒロト」
「前にも言っただろ、俺はお前が……」
少々乱暴に片手で後頭部をかき、見つめてくる視線を微妙にAから外しつつそこまで言いかけるとヒロトは言葉を飲み込み、小さなため息を吐いた。
「とにかくだ！今更、他のやつに乗り換えて連携技作ろうだなんてバカな事考えんな」
そして、早歩きで彼女の前まで
やってくると不思議そうに見上げて
小首を傾げるその顔に両手を伸ばす。
「ヒロトが最初に言ったんじゃ……っ！？」
マシュマロのように柔らかくしっとりとしたAの頬を摘んで横に勢いよく引っ張った。ハムスターのように伸びた顔にヒロトは思わず鼻で笑う。
「いいかよく聞け。お前は俺のパートナーだ。他の誰でもない俺だけのな」
「！」
「神のパートナーなんざ、凡人がそうそうなれるもんじゃねぇんだからお前は光栄にでも思ってろ」
分かったな？そう言ってから引っ張るのをやめたヒロトが両頬を優しく包み込むように手を添えればAは素直に頷く。それにつられてヒロトも頬骨から顎にかけて長い深い溝が両側へとつりあがる。
「問題はアイツにどうやって説明するか、だな」
頬から手を離し、後ろ指をさしたヒロトの先には仲間達に囲まれて賞賛を浴びているアフロディの姿。
「それなら私から何とか言ってみる」
「その方がいいか……頼んだぜ」
アフロディから横目をするりと逸らして視線を戻したヒロトは彼女に向かって親指を立てる。
「さっそくアフロディさんに＿＿……」
「その必要は無いよ」
噂をすればなんとやら。嫌でも耳にこべりつく凛としたその声にヒロトは反射的に体を捩り振り返る。Aもまた、その背中からひょっこりと顔を出す。
(アフロディ！)
("さん"をつけなさい)
(てぇ……急に殴るなよ！)
(あんたが失礼な態度とるからでしょ)
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作者名：小雪
| 作成日時：2019年5月15日 0時
