脳震盪 ページ6
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ヒロトにあしらわれ、少しだけムスッとした様子のままAが雷門ベンチへと戻ろうとしたその時！
岩戸の大声がスタジアム全体に響き渡った。
「岩戸くん？.....って!?」
不思議に思い、フィールドを見渡すとどうやらアクシデントが起こったようだ。
岩戸の前には、南雲が額を真っ赤に腫れさせたままフィールドで仰向けに倒れていた。一度は立ち上がった南雲であったが、身体が言うことを聞かず 再び倒れ伏してしまう。
「ちょっ...!? い、岩戸くん何したの!?」
一部始終を見ていなかったAが永世ベンチから声を張り上げるが、岩戸自身も混乱しているのか彼女の声が耳に入ってくるはずもなかった。
「た、大変...！」
フィールドから運び込まれた南雲がベンチ前で横にさせられ治療を受け始める。心配になり、南雲の元へと駆け寄ったAは膝をつくと 腫れている額に手を当てた。
「熱っ！」
炎症を起こしたためか、その額には熱を持っていた。
「とにかく、救急車を...」
「呼んでる暇なんてありませんよ！とにかく今は応急処置をしないと！」
南雲を運んできた大人達が慌てた様子でスマホを手に取るが、Aは厳しい口調で
「南雲くん、聞こえる？」
耳元で囁けば、彼はしんどそうに「あぁ」と応えた。
「頭痛はする？目眩や吐き気はしない？」
「頭痛はねぇけど...耳鳴りが。」
どうやら頭を打った衝撃で耳鳴りがしているらしい。Aは真剣な表情で 南雲の手を取り、腕の脈に人差し指と中指をあてると呼吸の乱れなどをチェックし始める。
「南雲くん、他に痛みはない？」
慣れた手つきで行うその姿は、中学生とは思えない対応だった。周りの大人たちや瞳子が心配した様子で見守っていると Aはホッと 安心したようにため息をついた。
「...脳震盪と言っても軽い症状ですね。」
「わかるの？」
瞳子がAにそう訪ねれば、彼女は南雲の腕から手を離し 優しくお腹の上に乗せると頷いた。
「脳震盪は、頭痛が酷ければ命に関わる場合もあるんですけど、彼のように耳鳴りといった程度なら 安心して大丈夫です。」
Aがそう告げると、心配していたタツヤたちもその言葉に安心したのかホッとした様子で南雲を見守っていた。
「...詳しいのね。」
「こういう事態はよくあることなので、勉強していたんです。医学の知識はすこしだけなら。」
幼馴染みも医学に詳しかったため、彼の父親に医学知識を教えてもらったのはAの中で記憶に新しかった。
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作者名：小雪
| 作成日時：2018年8月10日 20時
