バラバラのイレブン ページ38
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Aに名を呼ばれ、現実に引き戻される。
いつのまにかつくしが席を外していた。
何でも、コーチに用事を頼まれたらしい。
「ぼーっとしてたけど...大丈夫?」
顔色を悟られぬように目を逸らして
「それより...」と口を開いた杏奈。
「あなたはどうなの?」
杏奈がそう問えば「何が」と質問を返される。
「好きな人に決まってるでしょ!」
なんて言うと、Aは困ったふうに笑った。
「私は.....いるよ」
自嘲気味な笑みを浮かべるA。
彼女の言葉に、杏奈は大きな瞳を見開かせた。
−−悲しげな瞳に映るその人は誰なの?
杏奈が彼女に質問をしようと口を開いたその時。
「いい加減真面目にやれよお前...!!」
小僧丸の怒号がグラウンド中に響き渡った。
先程まで普通に練習をしていたはずの選手たちが、いつのまにか道成の周りに集まっていた。
険悪な雰囲気は全て道成に向けられており、明日人だけが「やめようよ!」と止めに入る。
「口出しする前に、自分のことをやったらどうです?」
奥入が眼鏡の中心に人差し指をあてながら、道成にキツい一言を浴びせた。
慌ててAが「待ちなさい!」と言って仲裁に駆けつけるも、道成は彼女とは反対方向に歩いていく。
「道成さん!」
すれ違った道成に慌てて声をかける。
だが、彼はいつもより落ちた声で
「少し、頭を冷やしてくる。」
そう告げて水道場へと向かってしまう。
「ま、待ってください...!」
Aが、小さくなっていく道成の背中を追いかけようとすると、剛陣に腕を掴まれる。
「放っておけよ、あんなやつ。」
怒りを孕んだその声でぶっきらぼうに告げた剛陣。
「だいたい、今までキャプテンらしいことなんて何一つしてなかったしな」
小僧丸が腕を組み、呆れたように言った。
「今更あんなこと言われても、正直迷惑ですよ」
日和もまた、気まづそうに目を逸らしながら小僧丸の意見に同意した。
「なら。尚更私は放っておけない。バラバラになっていくのを、指をくわえて見てることなんて...!」
「あ、おい!」
剛陣の手を無理やり振り払ったA。
道成への不満は高まっている。
だからこそ、今ここで和解しなければならない。
深い溝ができる前に...。
「A、待って!」
Aを追いかけようとする明日人。
しかし「やめとけ」と小僧丸に止められてしまう。
雷門選手とキャプテン、道成達巳
彼らの間に、わずかな亀裂が入り始めていた。
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作者名:小雪 | 作成日時:2018年8月10日 20時