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( You )




とりあえず冷やしといて、と手渡された氷の冷たさを手首に感じながら俊くんに問いかけると、かなり嬉しい答えが返ってくる。

マネージャーの子が俊くんに気があるのも知っているし、上から部活を見学していれば見せつけられるようにタオルやドリンクを渡す場面も何度も目撃する。

きっとわたしの知らないところで怪我をしたときの手当てやテーピングもしていると思っていたけれど、そんなことはなかったみたいで思わず顔がほころんだ。



「ふは、なに、安心した?」

「べ、別にそんなことないもん」

「素直になれって(笑)」

「…あの子、俊くんのこと、」

「あー、なんか聞いたことはあるなあ」



けらけら笑いながら手当てしていく俊くんの目はひどく優しい。

そんな顔、あの子の前でしてないよねって聞けたらいいんだろうけど、そこまで言う勇気は重いと切り捨てられてしまう可能性を考えると顔を出す気配はなかった。

そのまま揺れながらどんどん上がってくるテーピングの切れ端をじっと見つめていると、不意に俊くんに名前を呼ばれて顔を上げる。



「A」

「ん?…んんっ、ふ、」

「もっと」

「ぁっ、んぅ…は、俊く、」

「っ、はぁ、かわい」

「ね、ここ先生来ちゃ、ちょ、んっ」





どれだけキスしていたかはわからない。3分かもしれないし、10分かもしれない。

ただわたしの痛めた手首の方の手は腕を捕まれ、もう片方はきゅっと指を絡められて自由を失っていたから、ひたすら俊くんの唇と舌についていくしかなかった。



「も、長いよばかっ」

「こんくらいせなすぐ不安なってまうやろ?」

「〜〜〜、俊くんすき」

「俺もやで、Aしか好きちゃう」



やから、な?大丈夫やって。そう言って優しく頭を撫でて引き寄せてくれるから、首に腕を回して肩に顔を埋める。

俊くんの匂いでいっぱいになって、さっきまでの灰色の思考はどこかへ行ってしまって、俊くんのことしか考えられなくて。

わたしの彼氏は魔法使いなのかもしれないなんて、本気で思った。

ろく→←よん



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ふぅ - 続き楽しみにしてます! (2021年5月15日 14時) (レス) id: e27c2c145d (このIDを非表示/違反報告)
なべ(プロフ) - 凄く面白いので続きが読みたいです!更新待ってます!! (2021年4月5日 18時) (レス) id: f19b1505d1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - コメント失礼します!とても繊細なストーリー好きすぎます…!!またお時間に余裕がありましたら、更新して頂けると嬉しいです!!大好きな作品です! (2021年2月1日 6時) (レス) id: fd1c6c399d (このIDを非表示/違反報告)
オムライス(プロフ) - 更新頑張ってください! (2021年1月6日 14時) (レス) id: 3df1040212 (このIDを非表示/違反報告)
冬葉(プロフ) - ptfさん» 返信ありがとうございます!楽しみに待たせていたただきますね! (2020年6月29日 17時) (レス) id: 8304f0e3e9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ptf | 作成日時:2019年7月22日 23時

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