にじゅうさん ページ24
( Ten minutes later - Zenko )
「お前の秘密、公史郎にバラしてやってもええねんぞ」
海根然子、確かに火賀はそう口にした。
なぜ?いつどこでバレた?
Aが精神的ストレスに弱いことは知っている。
あの日、間違って大量の薬が入った棚を開けてしまったから。
入れ替わりに気づいていたから倒れたのだとしたら、火賀に伝わるのも辻褄は合うが、Aはまだ目覚めていないはず。
ダメだ、わからない。
だけど火賀が気づいたのだとしたらしろちゃんとAにバレるのも時間の問題だ。
どうしようという焦りから、立ち止まっていつもの爪を噛む癖が出てしまう。
すると、横から伸びてきた華奢な腕が、あたしの腕を柔く掴んだ。
「傷になっちゃうよ、…海根さん」
「…A!違うの、ねえ、Aならわかってくれるよね!?」
Aの口から出た名前で、全てを悟った。
Aが最初に気づいたのか、火賀から聞いたのか、そんなのはもうどちらでもよかった。
ただ、あたしから離れて行かないで。
彼女の笑顔は、不思議だ。
いつもみんなの前で見せている笑顔じゃなく、ふと見せる寂しそうな、淀んだ目をしているのにすごく綺麗に笑う顔。
上手く掴めないのに、思わず縋りたくなってしまう、そんな顔なんだ。
彼女になら、その忌まわしい名前を呼ばれても苦じゃない。
むしろ、たった1回のあの短時間でここまで依存してしまっているなんて、あたしが弱すぎるのか彼女の力なのか。
彼女の肩を掴んで必死に訴えるけれど、表情の変化も返答もない。
とうとう彼女にも呆れられてしまったのかと腕をだらんと脱力させると、彼女は窓に近づいて中庭を眺めた。
「ほら、見て」
変わらず普通のトーンで話す彼女に疑問を抱きながらも、手招きされるがままに窓の外を見る。
そこにいたのは、楽しそうに談笑しながら後片付けをする火賀と"あたし"の姿だった。
思わずAの方を向くと、さっきと同様恐ろしいほど美しい笑顔で、愛おしそうに2人を眺めていた。
「っ、A…」
「また、大切なもの取られちゃった」
同じだね、わたしたち。
彼女はあの日と同じセリフを口にすると、しなやかな指を携えた白い手をあたしに差し出した。
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「あの日」出没率高すぎ問題
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ふぅ - 続き楽しみにしてます! (2021年5月15日 14時) (レス) id: e27c2c145d (このIDを非表示/違反報告)
なべ(プロフ) - 凄く面白いので続きが読みたいです!更新待ってます!! (2021年4月5日 18時) (レス) id: f19b1505d1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - コメント失礼します!とても繊細なストーリー好きすぎます…!!またお時間に余裕がありましたら、更新して頂けると嬉しいです!!大好きな作品です! (2021年2月1日 6時) (レス) id: fd1c6c399d (このIDを非表示/違反報告)
オムライス(プロフ) - 更新頑張ってください! (2021年1月6日 14時) (レス) id: 3df1040212 (このIDを非表示/違反報告)
冬葉(プロフ) - ptfさん» 返信ありがとうございます!楽しみに待たせていたただきますね! (2020年6月29日 17時) (レス) id: 8304f0e3e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ptf | 作成日時:2019年7月22日 23時