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にじゅう ページ21

( Shunpei )




「A!」



彼女が廊下に倒れ込むぎりぎりで抱きとめる。


今回は意識が飛んでしまったようで、浅い息を繰り返す彼女の頬を軽く叩いて繰り返し呼びかけると涙で濡れた長い睫毛が震えた。



「Aー?わかるかー? 俊くんやで、大丈夫大丈夫」



不安げに揺れる虚ろな目をしっかりと見て頭を撫でると、彼女の小さな手が何かを探すように宙をさまようから、その手を捕まえてきゅっと指を絡める。

眉根を寄せて苦しそうに喘ぐ姿は、何度見てもこのまま消えてしまうのではないかと怖くなる儚さを孕んでいた。



「しんどいなあ、ちょっと息すんの休もか」



そのまま唇を重ねて呼吸を制限すると、彼女の口から漏れる息が落ち着いていくのがわかった。


繋いだ手の痙攣(けいれん)が治まり力が抜けたのを確認してゆっくりと顔を離せば、顔色は悪いもののいつも通り眠る彼女がいてひと安心する。




( Zenko )




「悪い、続けて」



先ほどまでとは打って変わって、本当に悪いと思っているのか疑ってしまうほどの冷たい声と表情をこちらへ向けると、火賀はそのままAを抱き上げて保健室へ向かってしまった。


すると周りがざわつき始め、一気に騒がしくなる。



「Aどうしたんだろ、大丈夫かなあ」

「え、てか火賀Aにキスしたよね!?」

「なんか慣れてる感じだったし」

「過呼吸ってキスで直るんだ…」

「火賀やるな!ちょっとかっこよかったわ」



確かに、キスしたことにも驚いた。



けれどAはなぜ過呼吸に、さっき様子がおかしかった理由は?



考えれば考えるほど他の選択肢が排除されていく。




頭の良い彼女のことだ。

もしもあの会話を覚えていて、真実に気づいたとしたら。





なんと、思うんだろうか。





今の彼女の状態が答えなのかもしれない。





けれどあの日、あたしたちは確かに弱さを共有した。





彼女だけが、あたしの中身を見てくれた。





拒絶されるかもなんていう不安はあの綺麗な笑顔が消し去って



きっと今度も、と淡い期待をあたしに抱かせた。

にじゅういち→←じゅうきゅう



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ふぅ - 続き楽しみにしてます! (2021年5月15日 14時) (レス) id: e27c2c145d (このIDを非表示/違反報告)
なべ(プロフ) - 凄く面白いので続きが読みたいです!更新待ってます!! (2021年4月5日 18時) (レス) id: f19b1505d1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - コメント失礼します!とても繊細なストーリー好きすぎます…!!またお時間に余裕がありましたら、更新して頂けると嬉しいです!!大好きな作品です! (2021年2月1日 6時) (レス) id: fd1c6c399d (このIDを非表示/違反報告)
オムライス(プロフ) - 更新頑張ってください! (2021年1月6日 14時) (レス) id: 3df1040212 (このIDを非表示/違反報告)
冬葉(プロフ) - ptfさん» 返信ありがとうございます!楽しみに待たせていたただきますね! (2020年6月29日 17時) (レス) id: 8304f0e3e9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ptf | 作成日時:2019年7月22日 23時

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