天使のみつ

天使の本 6 ページ28

それにしてもこどもとお風呂に入ることがこんなに気を遣うことだとは思わなかった


頭や身体をただ洗うのにしてもお湯の温度やシャワーの強さ、

シャンプーが目に入ってしまわないかとか、湯冷めしてしまわないかとか

こどもに慣れていないものだから、そんな小さな事ひとつひとつが気になってしまい、全てが終わって浴槽に漬かる頃にはすっかり脱力してしまっていた
　

小さいみつには浴槽は深すぎて溺れてしまいそうなので、抱き抱えた状態で一緒にお湯につかると、

先程湯船に浮かべておいたアヒルのおもちゃを見つけてぱちゃぱちゃとお湯を揺らしている


「たいしゅけ、見て！
アヒルしゃん、楽ししょうれしょ」


と嬉しそうに叫ぶみつを見れば、疲れなんてあっという間に吹き飛んでしまう

どうやらアヒルは水鉄砲になっていたようで、握った途端に顔面にお湯を浴びたみつがきゃーと笑うので、俺も笑った


俺のお腹に背中を預けてすっかりリラックスしているみつに、これだけ信頼されているのだと思うと嬉しいし、時折振り向き俺の顔を見て笑うのがたまらなく可愛い


その背中をそっと撫でてみる

以前服の上から触った時には間違いなくふわふわした感触があったのだが、今みつの背中には羽根はないので、まるで普通のこどもと変わらない


それでも自由自在に家に遊びに来ることができる、不思議な存在のみつ


ふと、先程の図書館を思い出す


さっきまで頭の整理ができていなかったが、そういえば、あの図書館の女性は「天使をご覧になられましたか？」と俺に聞いた

やはり、あの図書館と、あの本には、みつについて知るための鍵があるのだと、今更ながら気付く

出来るだけ早くあの本を読まなければ、としあわせそうに笑うみつを見ながら考えた

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