天使のみつ

幸せの定義 1 ページ20

「藤ヶ谷さん、終わりましたよ」


「あ、ありがとう
ごめん、寝ちゃった？」
　

よく慣れたベテランのメイクさんにはいつも安心して委ねているが、瞬間的にうとうとしてしまったことには流石に自分でも驚いた


昨日はあれからみつとベッドに潜り込んでそのまま寝てしまった

みつがいると、いつもそうだ

眠りが深くて朝まで一度も目が覚めることがない

お陰で、翌日はとてもスッキリしていることが多いのだが、何の支度もしないまま寝てしまったので、朝はちょっとだけ慌ただしい



「ほんの一瞬ですよ

はい、今日もカッコいいです」


「ふふ、ありがとう
お陰様で」

　
鏡を確認しながら、お礼を言うと、

「最近、藤ヶ谷さん、雰囲気変わりましたね」

言われて、驚いて聞き返す


「え…そう？
どんなふうに？」


「なんていうか…
とても柔らかいです

固い皮が何枚か剥がれたみたいとでも言うのかな

少し前までいつもどこか緊張感があったような気がするんですけど、それが緩んだと言うか…

あ、もちろんいい意味で、ですよ？

今も、こうして眠ってしまうところとか

心を許してくださっている気がして、
失礼かもしれないですけど、とても可愛くて…

嬉しかったです」


「…そうなんだ」
　
「こんな藤ヶ谷さん見たら、ファンがもっと増えちゃいますね」

たしかに、今までの俺はもう少しガードが固かったかも知れない

特に、北山が一緒の現場では余計



もし俺が柔らかい雰囲気になっているのだとしたら、それはみつのお陰だ

家にいる間はずっとみつと一緒に笑っているのだから


いつも見てくれている人から言われたので素直にそうなんだな、と思える

そしてこの人なら、もしかしたら俺の探している答えをくれるかも知れない、と唐突に思い、

荷物を整理している彼女が部屋を出てしまう前にと、引き止めるように聞いた

「ねえ、聞いてもいい？」

「え？」





「幸せって、どんなものだと思う？」
　

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