溢れる気持ち 9 ページ37
オートミールが口に合ったかどうかは分からないが、
「うまかった、ごちそうさま」と手を合わせた北山は、先ほどよりいい顔色をしている
やはり少しは何か食べないといけないんだな
「薬飲みなよ」
常温の水のボトルを差し出して言えば、その水と、俺の顔をまじまじと見て、言った
「すごいな、藤ヶ谷
何が欲しいか全部わかっちゃう
んだな
さすが、キング」
「…やめろって」
照れ臭く言えば、
だって本当だろ?
と、かわいい笑顔で笑う北山
可愛いと形容してしまう俺は、いろんな意味でもうそろそろやばいのかも知れない
すると、薬を飲み終わった北山が、もそもそと毛布を剥いで急に立ち上がり、バスルームの方へ向かうので、心配になって聞いた
「どこ行くの?」
「トイレだよ」
「ついて行こうか?」
「は、…
ば、ばか、いいわ!」
心配で存外本気で聞いたのだが、恥ずかしかったらしく、まだ青白い顔をしているくせに、この時だけ耳と頬を紅潮させる北山に、くすくすと笑いたくなってしまう
ひとりになって、ふと息を吐き、時計を見ると、人の家にいるにはずいぶんな時間になっていた
北山は帰らないで欲しそうだったし、帰るのも心配ではあるけれど、いきなり泊まるのってちょっとどうなんだと思うと、どこまで居ていいのか難しい
別になにもやましいことは無いが、今日のふたりの間に流れる空気がいつもより丸くて優しいだけに、俺自身の気持ちの持って行き場所に困ってしまう
すると、北山の携帯がブブ、と言う音と共に震え出した
マネージャーからの連絡かも知れない
ちょうど戻って来た北山に急いで声をかける
「北山、北山」
「ん?」
「携帯鳴ってる」
「あ…サンキュ」
「はい、もしもし
あれ、あ…」
受け取った携帯の画面を碌に見もしないでタップした北山は、驚いた様子で、ちら、と俺を見た気がした
話を聞いたら悪い相手かと思い、聞きたくなくても聞こえてしまうその場所から、そっとキッチンに移動し、洗い物を始めた
「あ、うん
だいぶ良くなった
風邪みたい
うん、いや、大丈夫
明日休みだから寝てれば治るし
え?
いや、いいよ
必要なもの、いっぱい買って来て貰ってあるから
…いや、だからそんなことないって」
それでも漏れ聞こえる北山の声
気心知れた風の、なんとなく甘くも感じてしまう声の変化
なんだろう…
ざわざわするこの感じ

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まひろ(プロフ) - seaぺこさん» seaぺこさん💕そうなんです😆まさにみつはほっぺたが潰れるくらいにFさんに押し付けているのですseaぺこさんの想像されている映像と私のイメージがぴったりで、伝わっている事がとても嬉しいです🥰 胸のざわざわも一緒に乗り越えましょう🥺 (2023年6月7日 8時) (レス) id: a7ac955b44 (このIDを非表示/違反報告)
seaぺこ(プロフ) - まひろさん♡落ち着かない気持ちの中、更新ありがとうございます。みちゅが本当に可愛くて、Fさんの胸にぷくぷくほっぺを潰してくっついてる姿を脳内映像にして悶絶しております。永遠に続いてほしい♡…今日は噂通りの日になるのでしょうか…幸せであってほしい… (2023年6月7日 0時) (レス) @page50 id: 490b4b0fa3 (このIDを非表示/違反報告)
まひろ(プロフ) - piroponcandyさん» 初めまして💕お読みいただきありがとうございます🥰みつが、piroponcandy様の癒しになれてとても嬉しいです💕最後の見直し後、本日日付けが変わる頃49話まで掲載しますので、続きもぜひ宜しくお願い致します🥰 (2023年6月6日 16時) (レス) @page48 id: a7ac955b44 (このIDを非表示/違反報告)
piroponcandy(プロフ) - まひろさん、初めまして。天使のみつ読ませて頂いてます。この作品は、私の癒しですね(╹◡╹)♡こんな天使ちゃんなら、私も欲しい💕続き楽しみにしてます。 (2023年6月6日 14時) (レス) @page47 id: bcc9486015 (このIDを非表示/違反報告)
まひろ(プロフ) - ちびさん» ちびさん💕ありがとうございます💕コメント、とても励みになります!最後まで頑張って書き上げますので、この後もどうぞよろしくお願いいたします💕 (2023年5月23日 23時) (レス) id: a7ac955b44 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まひろ | 作成日時:2023年4月30日 7時