6/憧れていた世界 ページ8
エイト「おい、そんな急がなくてもいいだろ」
ジョーは自分よりも遥か上を泳ぐAにそう呼びかけるも、彼女の興奮は収まらず楽しげな笑い声が聞こえてくるだけで泳ぐスピードが変わることはなかった。
「ジョー早く!早く!」
エイト「人間の世界は逃げやしねぇよ」
ようやく追いつくも、そこはもう海面近く。あともう一度ヒレを動かせば人間の世界と対面できるところだ。
「どうしよう、なんだか呼吸が苦しいわ。ジョーもう私に人間になる魔法かけたの?」
エイト「かけてねぇよ、お前の思い込みだ。ほら、行くぞ」
ジョーに手を引かれ、水面から顔を出す。
そこには見慣れた陸の世界が広がっており、Aは何度目かわからないため息をついた。
エイト「ほら、ここで終わりじゃねぇぞ」
「あぁ、待って!」
ジョーに引かれるがまま、浜の方へ泳いで行くA。
緊張しているせいか、ジョーの泳ぐスピードは早く感じて彼の袖をぎゅっと握った。
そして、気づけばもう目の前は浜辺。
Aは息を呑む。
エイト「じゃあ、いいな?」
「えぇ………少し怖いけれど」
ジョーの瞳を見つめていると、ヒレに違和感を感じ始めた。
そして__________
エイト「ほら、出てみろよお姫様」
ジョーに手を引かれ、海から姿を現した可愛らしい脚。
Aは目を丸くさせて勢いよく立ち上がった。
しかし、慣れない二本足によろめいて勢いよくジョーの胸に飛び込んでしまった。
「いたた………ごめんなさい、ジョー」
エイト「アァ………慣れねぇのに勢いよく立つんじゃねぇよ………下敷きになる俺のことも考えろ」
憎まれ口を叩きつつもAを支えるジョーはもはや王子そのもの。
そんなことを言ってしまえばきっと怒られるからAは黙っておいた。
エイト「あぁっと………そのままで歩かせるわけにはいかねぇな」
ジョーはヒラヒラと手を動かしてAに服を着せた。たった今彼が魔法で作り出したものだ。
白色のワンピース………清楚な見た目のAによく似合っている。
「素敵………ありがとう!ねぇ、あっちには何があるの?」
ジョーに手を握られてバランスを保ちながら、Aの人間界散策は幕を開けたのだった。
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ヴィランズ尊くて無理 - 続き楽しみにしてます‼ (8月9日 17時) (レス) @page19 id: 3b56fa98f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:下呂 x他1人 | 作成日時:2022年10月19日 17時