【ヴィランズ手下】人魚姫は囚われる【ファッショナブルイースター】 (ページ14)

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12/歪みの芽ページ14

なんだ、あの人間。

黒い短髪に、健康そうな肌。体付きは逞しく男らしい。きっと「色男」と呼ばれる部類の奴だ。

そんな男と、Aは楽しそうに笑い合っている。

俺は息を潜めて2人を眺めていた。
ただただ呆然と、まるで舞台袖から主役を見つめる脇役のように真面目に思えて。

そう考えると、無性に腹が立ってきて心の奥底に黒いふつふつとしたものが湧き上がるのがわかった。

ついさっきまであいつの隣にいたのは俺で、あの笑顔を向けられていたのも俺だったのに………どうしてぽっと現れたお前に取られるんだ？

憎い。

憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い……………………………………

ジョー「っでぇっ！」

突如手の甲に激痛が走る。

何事かと思い現実に引き戻されて目を向けると、あの男とは対照的な青白い俺の肌から真っ赤な鮮血がどくどくと流れていた。
無意識のうちに手の甲を噛んでいたらしい、それも血が出るほどに強い力で。

ジョー「こりゃあ………厄介な問題になったもんだ……」

冷静さを取り戻してあの2人に目を向けると、男は何かを思い出したように立ち上がった。
どうやら今日はもう帰るらしい。しかし、彼奴は明日もAにここに来るよう告げた。

ふぅん、やっぱりお前もそうなんだな。Aに惚れ込んだんだろう。

俺は乱暴に血を自分の服で拭い、Aの元へ。
平然を装って話しかける自分は我ながら演技上手だとくつくつと喉を鳴らして笑った。

あぁ、愛しいA。
お前は絶対に俺のもんだ。

その顔も、その瞳も、その身体も、その胸も、その声も、その笑顔も…………その心も。

誰にも渡さない。

天使の隣で、悪魔が微笑んだ。