反省 ページ30
「あのっ…！」
と、声をかけると一人が振り返った。
去ろうとするのも関係なしにできる限り、声を張り上げる。
「ライブ…楽しんでいってください…！」
そんな私の覚悟など知らぬといった様子で向こうは何も言わず足を早めてしまった。こんなことがあったけど、ライブのために、大好きなアイドルを見るために来たのだったら矢張り楽しんでいってほしいと思うから。
「…Aちゃんは優しいんだね」
「そんなことないですよ。ここはライブ会場で、あの方々はファンですから。当然の事です。」
否、違う。私はやはり無責任なのだ。行動も、さっきの言葉だって、相手からしたら快くなど思えないだろうな。寧ろ、不快だ。
だから私はプロデューサーになれない。
「ねぇ、Aちゃん。アイドルはさ、ライブをするよね。」
意図がわからず、いや頭が回らずそうですね、とだけ返事をする。
「このライブは俺達アイドルがいないと始まらないけど、俺達だけじゃあ始められない。」
「スタッフさんがいて、スポンサーがいて、プロデューサーがいて、ファンのみんながいてくれて、やっとライブになる。」
「どれが欠けてもいけない。支え合ってるの。だから、」
と言って羽風先輩の手が頬に伸びてくる。どうやら私の目からは感情が溢れ出していたようで、先輩の手によって拭われてからやっとその事実に気がつく。
プロデューサーも一人で抱え込むものじゃないんだよ。
と、優しくそれこそ風のように言葉をくれた。
「さ、早く戻らないと朔間さんたちが探しに来ちゃうし…それも温くなっちゃうから戻ろっか」
「そうですね…あの、」
さっさと戻ろうとしてしまう先輩の服の後ろを伸びない程度にくっと引く。
「本当にありがとうございました…！」
気にしないで？と微笑みながら頭に手をぽんと置かれた。その手は温度とは違う暖かさを持っていた。
ライブ開始五秒前→←イメ画のような何かですね！読まなくても大丈夫ですよ！
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作者名：ぽあぷるーじゅ。 | 作成日時：2018年2月12日 13時
