君が知る時。5 ページ22
茨side
彼女は鳩が機関銃をくらったみたいな顔をしていた。
至近距離で目が合うと、彼女は大きな瞳をぱちくりとさせる。
体感五分ほどの20秒間の後、涙の引っ込んだ彼女の顔が瞳に映る。そして、笑う…
それは、少しだけ悲しみを帯びたようなそれでいて嬉しそうな微笑みだった。
「落ち着きましたか？」
「いや、落ち着いてはいないんだけど。なんで？」
「貴女が言ったのでしょう？」
至極当然のことを自分はした迄だ。
「いや、そうだけど…」
「で、どうしたんです？まさかここまでさせておいて、なんでもないの一点張りではありませんよね。」
道理を尽くした説明を求めねば。
そう言うと、観念したように彼女は言葉をゆっくりと選び始めた。
少し遠へと向けられた視線は虚空を見つめていた。
「なんというか、自分に絶望してたんだよね…」
ダメで元々なのは知ってたんだけどさ。と慌てて付け足す。そういうところが謙虚というか、卑屈というか。
それから彼女は瞬きをして、自嘲気味に笑いかけてきた。
プレゼンの仕方に問題があったこと、酷く難癖をつけられたこと…どれも彼女を傷つける言葉ばかりで聞くに絶えなかった。
どうしてもっと上手く出来なかったのかな、みんな頑張ってくれたのに私が駄目にしちゃった…彼女の言葉で彼女自身が蝕まれていく感覚。
まるでそれが償いであるかのように。
話し終えた彼女はまたその黒くて綺麗な瞳に涙を貯めていた。
「ごめんね、こんな話聞いてもらっちゃって。ありがとう。茨くんは優しいね」
「いえ、そんな事はありませんよ。ずっと落ち込んでいられても迷惑なだけですから。」
「そっか。ありがと」
何に対する礼なのかはわからなかった。
「一人で帰れます？危ないですから送りますよ」
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作者名：ぽあぷるーじゅ。 | 作成日時：2017年8月13日 16時
