【オリオン】天狼の伴星【フロイ】

６＝取り繕う ページ6

「ん？」




動揺したのに気づかれたのか目を向けられたけれど、舌を噛んでなんとか笑顔を保った




「っ…ゎたしも時間が惜しいので、さき、失礼します…」




なんとか平静を装ったまま立ち上がれたけれど、舌を噛んだせいで低い怒ったような声が出てしまった…




「…あっ！ごめんごめん、最近チームメイトとしかいなかったから…！」




それで気付いたのか慌てて服を着てくれるフロイ。


やめて、フロイは悪くない…。




「ぃえ、ぉ構いなく…」




今は兎に角一人になりたい。フロイの目が届かない所に行きたい。


早く一人になって舌の痛みから解放されたい…！！



「そ、それでは…」




震える手を誤魔化しきって、なんとか退室し、


数歩歩いて、壁に手をついて溜まっていた息を一気に吐き出す




「───ｯはあ…！！はぁ…っ！」




息が詰まって窒息するかと思った…！


うぅ…舌噛みすぎた…痛い…。




ｶﾞﾁｬ




「A」


「あら、どうかされました？」



扉の開く音がした瞬間背筋を正し、何事もなかったように振る舞う。



フロイは既にパーフェクトスパークのジャージに着替え終わっていた。




「ほんとごめんね…。Aが来たばかりの頃、“嫁入り前の娘に裸体部分を見せるなんてはしたない！”って怒られたのに」


「(その節は声を荒げて誠に申し訳ございませんでした！！)」


「…怒ってない？」


「…元々怒っていませんよ。本来あそこはフロイの部屋。私に気を使う事なんて無いのですよ？」




痛みが和らぎ始めた舌が回って、笑顔で答えられるが

フロイはどこかまだ浮かない顔…。




ぁ、あれ…？笑顔で返したのに、フロイは笑ってくれない…。


本当に怒ってるように見えてしまったのかしら、

そんな、誤解よ。




ええと、何を言えば…









何を言えば、フロイに嫌われない─────？









「練習が始まっちゃうから、先に家出るね」


「ｯ……。はい、いってらっしゃいませ、フロイ」




私を通り過ぎたフロイの後ろ姿に


頭を下げて見送った。

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