【オリオン】天狼の伴星【フロイ】

２４＝再再来 ページ24

拾い上げて、カバーに刻まれている校章を見て自分の学校のだと確信する。




「(誰か見に来てくれてたのかな?)」




申し訳無く思いながら、知り合いだったら連絡を入れて届けようと思って


生徒手帳のケースを開いて、手が止まった。




「(僕だ…)」




本来、顔写真と氏名が入っている透明のフィルターの箇所には、


雑誌の切り抜きと思う僕の写真。




変に緊張しながら、そっと写真の入っているポケット口を開いて、


慎重に写真を半分引き抜いて、




氏名が見え────









「(………漢字、読めない)」




断念して閉じた。




「(中国とかより日本語っぽいから…Aだったら読めるかな…?)」




アジア人留学生の中で日本人はAとあと二人…

──
─

一方その頃Aは




「えっ!?手帳らしきものは落し物に無い!?」




こそこそと公衆電話から名乗らず運営に問い合わせて、絶望したいた。




「そ、うですか…。いいえ!さほど大した物ではありませんでしたから…落とした所も思い違いかもしれません。はい、それでは…」




震える手で受話器を置き、顔面蒼白になっていると思われる顔を両手で覆う。




「(大した物すぎるよ!!!!)」




どうして無い?本当に私が無くしたと勘違いしてるだけ?まさか、誰かが拾って持って帰った?


だとしても悪用される?同じ学校の生徒ならば、更に危険性が増す!!




学校中に広まったが最後…大厄災だ。もう学校へいけない。本家へ顔向けできない…




「…。」




天兎の人間が自身の厄災を占えずに失態してどうする!!!

いや、でも!自身のことは占わない主義…とか言ってる場合じゃない!!!



うわあああ益々、本家には絶対知られてはいけない…!!!フロイにも知られてはいけない!!!




というよりか、この世の誰にも知られちゃ駄目なのにいいい!!!!




「(あ…駄目…立ち直れそうに無い…。墓場まで持っていくはずの物証が…)」




ふらりと立ち眩みがして、ガンッと頭とガラスにぶつける。


でも…今はどうでもいい…。




天兎として相応しくない所作も、痛みも…


今の傷心さには、何も勝てない…。




あぁ、気付かれる前に早く帰らないと…

でも、動きたくない…




瞼が閉じた時、扉越しにノック音がした。




あぁ…私以外に公衆電話を使いたい人がいたんだな…。



すみません、今すぐに退きます…か、ら……、




「やぁ、A」


「………ひゃあああ!!??」




ｶﾞﾝｯｯｯ




頭ぶつけた。

２５＝紅猿子→←２３＝プライド

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す