疑惑ト探リ ページ47
数時間後、BARから出た中原は大きな溜息を一つ吐いた。真逆呼び出されて、あんな事をされるとは想像が出来なかったのだ。
正直なところ、コレはかなりキツいだろうが、其れは仕方がない。
「......全く、あの女は何を考えてるンだ」
「本当にねぇ。私の妻は時々考えが読めないから、困ったものだよ」
耳障りな声。
この声は忘れもしない___否、忘れる事が出来ないものだ。中原は後ろを振り返り、背後に立っている人物を確認する。矢張り彼の想像した通り、彼の背後に立っていたのは奴だった。
砂色の外套のポケットに両の手を入れ、心底嫌そうな表情で此方を見下ろしている。
相手の方が背の高さでは上な為、自然と此方が上を見上げなければならないのが無性に腹が立った。
「なンで手前が此処にいる......太宰」
「何故って.........私も君と同じだよ」
「.........!」
____ 成る程、そう云う事か。
中原は太宰が何故此処に来たのか、其の真意を理解する。互いに死ぬ程嫌いな存在ではあるのだが、流石に此ればかりは、しのごの文句を言っている場合では無かった。
「却説、小さな帽子の妖精さんは放置するとして......私は私で為すべき事を為さねば」
「今此処で手前を細切れにしてやろうか、貧弱野郎」
身長の事をさり気なく指摘されたら、中原は中原で太宰に食って掛かる。互いに互いを罵り合う言葉をぶつけ乍、大通りに出た。
雰囲気は最早最低最悪、隣を歩くのさえ嫌なのか二人共距離を取って歩いていた。
道行く人々は、互いを罵り合う言葉を掛け乍も、何故か共に街を歩いている二人組の男達を不思議そうな表情で見送っている。
「そうそう、中也」
思い出した様に太宰が中原の名を呼ぶ。
口喧嘩は一度中断だ、目線を上に上げ中原は太宰の濃い茶の瞳を見る。其処には何時もの剽軽な態度をした彼の姿は無く、黒い影を静かに纏った【何か】が居た。
「君が彼女を想うのは勝手だけど......手を出したら、赦さないよ?」
彼の背丈に合わせて背を屈め、太宰は耳元で囁いた。
気付いていたのだ。
BARから出て来た時に中原の服から薫ったのは、Aが何時も纏っている香水の匂い。ほんの僅かではあるが、中原からも彼女と同じ薫りがした。二人の間に間違いが無いと信じているが、若し其の間違いが起きていたら?
そんな事、想像したくない。
中原は本日二度目の溜息を吐けば「有り得ねェよ、ンな事」と、云うのだった。
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ミサぽん(プロフ) - カエデさん» コメント有難うございます! いやいや、そんな......羨ましいだなんて、もっと上手くなりたいと思っている位ですよ、ですけど 有難うございます!嬉しいですっ (2019年7月7日 17時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)
カエデ - こんにちは。読ませて頂きました。ミサぽんさんって絵がお上手なんですね!羨ましいです! (2019年7月7日 16時) (レス) id: 611e70016f (このIDを非表示/違反報告)
ミサぽん(プロフ) - 夜宵 ―ヤヨイ―さん» コメント有難うございます!成る可く早い内に、続編を作成します。いつも読んでくださり、感謝感激です! (2019年6月16日 9時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)
夜宵 ―ヤヨイ― - こんにちは。引き続き続編も楽しみにしております!笑 (2019年6月16日 9時) (レス) id: 03eb66dcd7 (このIDを非表示/違反報告)
ミサぽん(プロフ) - 夜宵 ―ヤヨイ―さん» 初めまして!いつも!? え、え、有難うございますっ 楽しく!?...嬉しくて涙が出てしまいます。これからも更新、頑張っていきますね!感想、有難うございます。 (2019年6月9日 22時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ミサぽん | 作成日時:2019年5月27日 11時