太宰夫婦は何処か冷めている。【文豪ストレイドッグス】

闇ニ咲ク花ハ光ヲ求メル ページ40

中島は、新しく武装探偵社に加わった少女『泉 鏡花』と共に依頼を終えた後だった。
否、正確に云えば依頼は受けたのだが成功したのかは微妙なところである。
泉は落ち込んでいた。


「はい」

「............!」


泉が受けた依頼は、小口ではあるが、武装探偵社の社長が直々に依頼をしてきた物だった。
内容は【証拠品を法廷の判事に渡す】事。泉が探偵社に入って初めての仕事だ、彼女の事を話すと長くなるのだが一部語ると、彼女はヨコハマの暗部全体を支配する凶悪な組織・ポートマフィアに所属をしていた。

殺戮に特化した異能『夜叉白雪』を使い、彼女は半年で三十五人の人間の命を奪った危険人物。三十五人殺しと呼ばれ、警察に捕まれば死刑は免れないと迄言われていた。だが、彼女自身「もうこれ以上 一人だって殺したくない」と、己が犯した罪を幼いながらにどれ程重いものであるかを理解している。

現在彼女は、探偵社に身を置いていた。探偵社社長＿＿＿『福沢 諭吉』の孫娘と云う名目で、中島と同じ孤児である彼女に居場所を与えたのである。


「大変だったね。判事には社長が話を付けてくれたよ、御友人なんだって」


判事に証拠品を渡す筈だったのだが、彼女は初めての仕事を必ず成功させたかった。
其れが完全に空回りをし、仕事先でトラブルを引き起こしてしまい、判事を怒らせてしまったのだ。

落ち込む泉を元気づけようと、中島は彼女が以前食して気に入ったと云うクレープを渡す。


「にしても吃驚(びっくり)だよ。鏡花ちゃん実は 暗殺者の才能が......」


中島は失言した。
暗殺の事を触れられるのは、彼女だって厭な筈。慌てて彼は「......ご免」と自分の発言を悔やみ、謝罪の言葉を述べた。
対して泉の方は、人形の様に表情を殆ど変える事が無く、ポツリと呟く。


「停電にする処までは良かったのに......」


少々物騒な科白だった。中島は口には出さないが、そこまではアリなのかと突っ込みを入れると苦笑をする。


「何か新しい特技を覚えれば善いさ、例えば......」

「色仕掛け?」

「それはもう忘れなさい」


歳が少し近いと云う事や、自分と似た様な生い立ちである泉を中島は放っては置けなかった。彼女が闇の世界では無く、穏やかな光の世界で生きていける様、彼は力を尽くしたいと思っている。

泉も、自分の力が暗殺だけの物ではないと証明をしたかった。
闇に咲く花は今、強く光を求めている。

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