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「死亡ーッ!胡蝶シノブー!
上弦ノ弐トノ格闘ノ末、死亡ーッ!」
…いま、なんだって?
しのぶちゃんが…死んだ…?
鎹烏の声が脳内をこだまし、頭の中が真っ白になる。
身体中からじわじわと汗が流れる。
つらい、悲しい、悔しい。
貴方のこと、大好きです。
そう言ってくれたしのぶちゃん。
間に合わなかった。
守れなかった。
ついさっきまで一緒にいたのに。
あの温もりは、もう。
涙でどんどん歪む視界。
止まってしまいそうな足を、どうにか動かして。
もう、嫌だ。
こんな悲しい世界は。
と、行き止まりなのか、たどり着いた鬼だらけの部屋。
足を止めると左右の襖からもドバッと出てくる。
「稀血ィ。」
「稀血だァ。」
本当に何年ぶりだろう、鬼を斬るのは。
そんなの、どうでもいい。
カナエさんは鬼と仲良くなりたいと言っていたけど、わたしはもう、黙って滅びてほしいと思う。
一気に飛びかかってくる鬼たちを睨み、ふぅ、とひとつ息を吐いて。
『炎の呼吸 肆の型 盛炎のうねり』
怒りに任せながらも丁寧に出した技。
身体は、思った以上に軽く動いた。
久々の感覚、日輪刀は少し重い。
刀についた血を床に振り落とし、灰になった鬼たちを見つめる。
腹ただしい。
けれど、この鬼たちもかつては人間だったのだろうか。
鬼に襲われたあの日、わたしも鬼になっていた可能性があったのだろうか。
家族が鬼になっていたら、きっと最終選別みたいに足がすくんだりして、
こんなあっさり斬ることはできないんだろうな。
なんて、ぐるぐるぐるぐる。
やっぱり、鬼斬りは向いてない。
そう思いながらも、守りたい人の顔が頭の中を過ぎるたびに、刀を持つ手に力が入る。
もう誰も失いたくない。
何をしても悲しみが収まることはないけれど。
またひとつ、深呼吸をする。
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金平糖 - うぅ...感動しました... 一気読みしたんですが、一気読みしたからこそ凄く感動しました。こういう系の話には弱いので、、、 (2021年10月2日 23時) (レス) @page45 id: f3f7dadf62 (このIDを非表示/違反報告)
雪乃 - 不死川の夢小説少なかったのでとても嬉しかったです!出来れば続編も読みたいです、お願いします。一つ…鬼舞辻が鬼゙無゙辻になってたので、そこは直して頂きたいですね。 (2020年12月11日 7時) (レス) id: cedaea8f17 (このIDを非表示/違反報告)
かぼ(プロフ) - ろこもさん» 完結おめでとうございます!素敵な作品でした!実弥と夢主が幸せになれて良かったです(はぁと)ろこもさんも大好きです!ありがとうございました! (2020年8月7日 5時) (レス) id: abbc87cbf8 (このIDを非表示/違反報告)
ろこも(プロフ) - 我妻ライさん» 我妻ライ様!返信遅れてしまいすみません!絶叫嬉しい限りです!元気が出て頑張れました!!読んでくださりありがとうございます! (2020年8月7日 0時) (レス) id: ef1ad6d2c7 (このIDを非表示/違反報告)
ろこも(プロフ) - かぼさん» かぼ様!返信遅れてしまいすみません…!一気読みありがとうございます!実弥さんを表す文章力が足りませんが、より好きになるお手伝いができれば嬉しい限りです…ありがとうございます…! (2020年8月7日 0時) (レス) id: ef1ad6d2c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ろこも | 作成日時:2020年7月7日 22時