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実弥side
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コイツは、なんなんだ本当に。
出会った時から、俺のペースを見事に崩す。
俺もいまはこんな風に言えたが、結局ずるずる三年考えた上で作られた言葉だ。
『実弥、会いたかった。』
別にこんな反応を望んでいたわけじゃない。
それでも、それでも。
尖っていた心が、溶けていくのがわかる。
三年前、目の前で匡近を亡くし、Aとは距離ができ、一人になった。
孤独で良いと思っていたはずが、気づけば二人の優しさに浸かっていた自分の甘さを実感した。
それからの自分の荒れようはよくわかっている。
相手が鬼人間問わず暴れ回った。
他の隊士からは怖がられているし、先日玄弥にも強く当たってしまったばかりだ。
いま自分の肩に幸せそうに頬をすり寄せるAの姿を見て、
急に満たされた心に馬鹿馬鹿しくなる。
それでも込み上げる愛おしさに自分で呆れながらも、そっと伸びた髪に指を通し、頭を撫でる。
懐かしい甘い香りがふわっと鼻を掠めた。
『実弥。』
「なんだァ?」
『早くこんな世界、終われば良いね。
そしたらなーんも気にしなくて良いのになぁ。』
「あァ?どういう意味だァ?」
『もし世界が変わったらの話。』
「…あと少しだァ。世界は、変える。」
世界が、変わったら。
藤の花の家紋の屋敷を出た時の話を、コイツは覚えているのだろうか。
『それにしても、鬼に家族を殺されてなかったら出会えてなかったなんて、皮肉だね。』
「…そうだな。」
どれほどの努力を重ねていても、
まだ、お袋が鬼になったあの時から世界は殆ど変わっていない。
鬼を思えばまた滅殺したい気持ちで一杯になる。
いくら、腕の中の彼女を愛しく思おうが、
鬼がこの世にいる限り自分の気持ちが二の次なことに変わりはない。
小「良かったのか?置いてきて。」
実「…あァ。」
小「貴様のあのような顔が見れる日が来るとはな。
本宮が抱きついたときは見ものだったぞ。」
実「あァ?テメェはいつも曝け出しすぎだァ。」
小「なんだと!?」
Aは時透の屋敷に泊まるそうだ。
それを聞いても、大きく動揺はしなかった。
自意識過剰かもしれないが、どこかでそうじゃない自信もあった。
こんな世界、早くブチ壊してやる。
そう胸に誓う。
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金平糖 - うぅ...感動しました... 一気読みしたんですが、一気読みしたからこそ凄く感動しました。こういう系の話には弱いので、、、 (2021年10月2日 23時) (レス) @page45 id: f3f7dadf62 (このIDを非表示/違反報告)
雪乃 - 不死川の夢小説少なかったのでとても嬉しかったです!出来れば続編も読みたいです、お願いします。一つ…鬼舞辻が鬼゙無゙辻になってたので、そこは直して頂きたいですね。 (2020年12月11日 7時) (レス) id: cedaea8f17 (このIDを非表示/違反報告)
かぼ(プロフ) - ろこもさん» 完結おめでとうございます!素敵な作品でした!実弥と夢主が幸せになれて良かったです(はぁと)ろこもさんも大好きです!ありがとうございました! (2020年8月7日 5時) (レス) id: abbc87cbf8 (このIDを非表示/違反報告)
ろこも(プロフ) - 我妻ライさん» 我妻ライ様!返信遅れてしまいすみません!絶叫嬉しい限りです!元気が出て頑張れました!!読んでくださりありがとうございます! (2020年8月7日 0時) (レス) id: ef1ad6d2c7 (このIDを非表示/違反報告)
ろこも(プロフ) - かぼさん» かぼ様!返信遅れてしまいすみません…!一気読みありがとうございます!実弥さんを表す文章力が足りませんが、より好きになるお手伝いができれば嬉しい限りです…ありがとうございます…! (2020年8月7日 0時) (レス) id: ef1ad6d2c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ろこも | 作成日時:2020年7月7日 22時