この世界の終わりには ２【不死川実弥】

70 ページ20

**




地上に出てから1時間半。




何度も、あ、役にも立てず死んだかも、と思った。




鬼舞辻無惨の背中から出る触手は、さっきの上弦の壱の歪な斬撃とはレベルが違った。


一瞬でも判断を間違えると完全に絶命する。


こんなに時間の経過を願ったのは、人生で初めてだ。





『カナヲ！』

カ「Aちゃん！」




カナヲと生きて会えた喜びを感じる間もなく、攻防を繰り返す。


カナヲは傷だらけで、やっぱり終の型を使ったのだろうか、片眼は色が変わっていて。




必死でしのぶちゃんの仇を討ってくれたのだろう。


本当は今すぐにでも抱きしめたい。




この場所でそんな希望は叶うはずもなく、ただただ無心で刀を振り続けていた。





……






愈史郎くんの紙を頭につけて、戦っていたその時、
無惨の攻撃で気付いたら頭から建物の屋上に突っ込んでいたようだ。




「Aさん！」




隠の仲間たちの声。


目を開けると群青色の空。


夜明けが近い。




『っ無惨は！？』




起き上がろうとしたけど身体中が痛い。


けど戦っていた時の激痛とは違う。




腕を押さえつけられている方を見ると、愈史郎くんが注射器でわたしに何かを打っていた。




愈「まだだ。血清が効いているはずだ。動けるか？」

『大丈夫。愈史郎くん、もしかしてこれ。』

愈「そうだ。ちゃんと効いている。
珠世様考案だから当たり前だろ。」

『ありがとう。』

愈「それは無惨を倒してから言う言葉だ。俺たちは必ず勝つ。
あの研究の日々は裏切らない。」





隠たちに支えられて見下ろすと、
無惨は炭治郎と伊之助くんと善逸くんと交戦していた。




みんなボロボロだ。


わたしも早く行かなくちゃ。




飛ばされる前より身体が軽い。


珠世さん、しのぶちゃん、ありがとう。


そしてわからないながらに一緒に助手を担っていたアオイを思い出す。


もう悲しい顔はさせたくない。





地面を踏み込み、技を出しながら着地する。





炭「Aさん！？」




炭治郎を中心に無惨を壁に追い込む。




腕を引きちぎろうとする甘露寺さんの方を向く無惨を逆から斬り込みにかかり、
触手ごと壁に突き刺すが、新たに出てきた触手が腹部に向かってくる。




まずい、無惨より先に死ぬ、と思った瞬間、
雄叫びを上げて突っ込んできたのは実弥。




間一髪のところで出てきた触手を切り刻み、また無惨を固定する。




実「夜明けだ！！このまま踏ん張れェェェ！！」

71→←69

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す