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スキップでもしそうな勢いで立ち去るAを引き留められるわけもなく、その話はその場で忘れていた。
後日しっかりマネージャー伝いに連絡が来て、アレマジだったのか…と思ったのは記憶に新しい。
それからぴったり2日後の渋谷、不安はありつつも本当に自分のお気に入りの服でやって来ると、少数精鋭のカメラさんと、いつもより濃いメイクとヘアメイクを施したA。
「さっすが、似合ってるね!」
「…ちょっ!おまえさあ、」
「えっなに変!?…あ、ちょっと暑いけど後で衣装変えもあるから!!まこのも!!」
マジでそういうことじゃない。
Aが着ていたロンTはどこかで見覚えがあるなと思って古い記憶を辿っていくと、それはまだ寮で生活していた頃とかに俺があげたやつだった。
あの頃、本当にもう着ないからという理由で押し付けたそれを、今と変わらず馬鹿みたいに目を輝かせて喜んで受け取っていたけど、何でそれを今。
よりにもよって、大切な1st写真集の撮影で普通持ってくるだろうか。
Aを可愛がるあの人たちの気持ちに共感できるのはこういうところだとは思うけど、それって色々紙一重だ。
けど、Aの元よりのセンスも光って、アクセサリーや小物で合わせたスタイルは、個性が目立つ今風のそれにも見えるのが不思議だった。
なんでか知らないけど、たまたま俺の服の差し色の水色とも合ってしまっていて、今日の撮影も相性はバツグンだろう。
「まこ!いいの作ろうね!」
そう言って屈託無く笑うAに合わせて揺れるピアス。
それを辿ると、右耳には同じ位置に空いたトラガスが光る。
……いや、同じ位置に空いていた、トラガスだ。
やっと決心がついたんだ、決別するわけじゃないけどやっと一つ前に進めると思ったところなのに。
そうやっていかにも俺だけにしか、みたいな顔で笑うのは変わらないよな。
壱馬さんや北人さんよりも早く、ずっと長く、その顔に翻弄されて、恋焦がれて、縋って、どうしようもないとこまで落ちたのは、もうそろそろ過去の話にできると思ってたのに。
でも今は、どこからくる思いだとしてもそんなの関係なくて、Aの大切なはじめてを貰えるのは俺だけなんだから。
自信と、ちょっとだけの優越感を持って今日に挑むだけだ。
「足ひっぱんなよ」
「え!?私の写真集だよね!?」
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vol.263 うちのかわいい店長👨🍳✨→←vol.262 🤫📷✨
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も。(プロフ) - 美紀さん» コメント、お心遣いありがとうございます!🥲🙏🏻✨暫くは毎日更新していきますので、良ければお付き合いください!✨ (2021年10月2日 14時) (レス) id: 0f1c4a8bf0 (このIDを非表示/違反報告)
美紀(プロフ) - ランぺ大好きです最高ですコロナウイルスに気をつけてくださいね (2021年10月2日 10時) (レス) id: e19dcb272d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:も。 | 作成日時:2021年10月1日 22時