私たちは嘘をつきました【紫】 (ページ9)

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恋するフリ始めました【9】ページ9

今、私はふかふかのソファに正座して、その前の三ヶ月前にかったまだ少し新しい白くて角が丸い机の上に携帯を置いてそれを見ている、のを早30分。そしてその横には昼深澤さんに渡されたしわくちゃになった紙。

『連絡、するか…………』

実はこの呟きも早くも6回目。
いつもはこんなに優柔不断というか思いきりがない方ではないと思う。

時刻は22時、本当は寝たい。明日もドラマと映画の撮影というはしごだ。
本来なら私は最近寒くなったからとヒートテック素材の毛布に包まって大好きな動画を聴きながらうとうとしているはずなのだ。なのに今日はまだソファに正座している。
まぁこれも思いきりの悪い自分が完全に悪いのだけれど、男の人に自分から連絡するのなんて本当に何年ぶり？しかもその連絡する人が私の今後を握っていると言っても過言ではない人なのだから余計に…

もう世間では夜遅い時間なんだから今連絡するのは失礼か…？
でもこんな状況では私は寝れるはずもなく…

そっと机の上の携帯を持って、LINEを開き、重たい指で一文字ずつIDを入力していく。

パッと出て来たアイコンと、深澤さんらしき名前。そこの下にある追加ボタンを押した。

『ハァ～～～………………』

友達追加しただけなのにこの緊張感はアホでしょ。なんならクランクインと同じくらい緊張してしまった気がする。まだメッセージも送ってないのに。本番はここからだよ。

トークを開いて真っ新な画面がでてくる。厳密には背景を自分が好きなキャラクターにしてるんだけれど、そのキャラクターが今は少し憎く見えてしまった。無駄にかわいいじゃん…無駄ではないけれど…

あれ？何て打てば良いの？
とりあえず名乗って…挨拶したら良いの？

【夜遅くなってしまい、すみません。
　お疲れさまです。Aです】

入力画面にそう打った。あとは右の送信ボタンを押して…

『うわ！！押しちゃった！！』

思わず携帯をソファに投げ出す。

送ってしまうと、なんだかスッキリした気がして『なーんだあんまり大したことじゃないじゃん』と一息ついたところに

ピロン

着信音が響いた。

え、もう返事きたの？

もしかしたらマネージャーさんかもと思ったけれど、紛れもなくさっき追加したアイコンと名前が表示されている。

【連絡ありがとう❗】

それだけ来ていたと思ったら

【お昼あんまり話せなかったから、近いうちにどこかでご飯でも食べながら話さない❓】

…どこかで？