私たちは嘘をつきました【紫】 (ページ22)

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「あのね、向井さんと、付き合うことになったの」

かわいい声と瞳の水分量が多くて大きな瞳をキラキラさせて告げられた言葉は

あまりにも私にとっては残酷だった。

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「これでクランクアップです！今日までお疲れ様でした～！」

そう言ってどこからともなく何人か分の花束をスタッフさんたちが持ってきてくれた。

今日でこのドラマの撮影が終了した。どこからともなく拍手が起こり「お疲れ様でした！」「ありがとうございました～！」と労いの言葉が飛びかい、無事にこの日が迎えられたことを喜ぶ中でどこか寂しそうにも見えた。

この現場は本当に和やかだった。
私はあんまり輪に入るタイプでもないし、何しろ同時並行で撮影している映画の撮影のこともあり、あまり皆ほど会話ができなかったと思うけれどそんな中でも話しかけてくれるスタッフさんや共演者の方がとても温かかった。
向井さんもちょくちょく気にかけてくれているように感じた。

…深澤さんのことを聞いてからは余計に。

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深澤さんとの秘密の約束をしてから、次の撮影日

『…あの、向井さん』

「ん？え！Aさんやん！どないしてん」

その日の撮影が終わってから、できるだけ自然に向井さんに話しかける。本当に自然に。
本当に心拍数140くらいはありそうだけれど。そこは俳優としての自分をなんとか引っ張り出す。あくまでも冷静に冷静に…

『前にお会いした、深澤さん？のことなんですけれど…』

「…ふっかさん？…え！ふっかさんのこと？！」

『その…どんな人なのかなぁと思いまして…？』

…わかりやすくびっくりしている。まぁ私も自分が何を言っているかよくわかってないから何この構図って感じ。お互いはてなが頭にある気がする。

びっくりした後に頭の中で何やら考えを巡らせた後に、少しにやっとして

「ふっかさんな、二枚目をわざと演じたりするんやけれどほんまにかっこええと思うし何より優しいんよ！ふっかさんのこと知ったら誰でも好きになるで！」

そう言いながら携帯を開いたかと思うと、

「前になふっかさんAさんのことかわいいって言ってたから、ふっかさんAさんのこと気になってるんやと思う」

…ん？それは初耳だな？