私たちは嘘をつきました【紫】 (ページ20)

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とっさに「……あはは園月さんもそんな言うんだ～！」なんて冗談ぽく返したけれど、たぶん俺、真っ赤だとおもう。だって今身体中が熱いもん。こんな時肌が白いとすぐわかられちゃうから気まずい。Aさんも『あれ…？』みたいな顔してるし。

ちょっと待ってさっきまで何の話してたっけ！？

なんとなく気まずい空気の中店員さんが入ってきて救われた。

そこからは予め作っていた話をそれとなく話しだす。

本当はお偉いさんもその娘さんも嘘。そういうのは俺は聞いたこともないけれど、
この世界に入ったばっかりのAさんなら信じてくれそうだと思ったら案の定素直に受け止めてくれた。

Aさんにとっても康二と話せるのは悪いことじゃないと思うし。

それでもまだ、どこかで躊躇っているような感じだったから

「でもAさんが近くにいなかったら、写真のこと、ぽろっと言っちゃいそうだなぁ」

最後に畳み掛けたら、ちょっと絶望した顔をしたかと思うと観念したように頷いた。

そんな顔を見て心も痛んだけれど、これくらいしないと近づけない気がして。

Aさんもすごい女優さんだけれど、こんなにスラスラとあることないこと喋れるなんて今は俺もすごい俳優になれんじゃないのかな～なんて思ってしまう。まぁ冗談だけれど。

こうして、俺とAさんの奇妙な関係が始まった。

側から見るとAさんが俺のことを好きみたいになっているけれど、
本当は俺がAさんのことが好きで。

嘘の物語で君を騙して、

矢印があべこべの関係で、

そんな嘘だらけの中で本当なのは

俺が君を好きってことだけ。